2015/03/08

母親へのアンケート調査記録「終わらない被災の時間〜原発事故が福島県中通りの親子に与える影響」

(成氏と牛島氏に2011年秋にお会いしました。以前から原発の問題を追っておられ、また水俣の研究もされていました。そして、お二人は小さな双子の赤ちゃんを育てる親でもあり、研究者として放射能影響下の母子の問題に取り組もうとされていました。相次ぐアンケート調査に疲弊している現地の母親たち、発せられた「モルモットじゃない!」という叫びに表れた不信感に向き合いながら、続けてこられた様子があとがきに添えられていました。こうした地道な調査が、消されそうになるひとりひとりの母親の格闘を記録し、社会問題化していくのだと思います。関心のある方にぜひ届いて欲しい1冊です。 子ども全国ネット)

http://sekifusha.com/8120

 成 元哲、牛島 佳代、松谷 満、阪口 祐介
ISBN978-4-88344-250-8
定価:本体価格1800円+税

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見えない放射能 不確かな情報

見えない放射能と情報不安の中で、幼い子どもを持つ母親のストレスは行き場のない怒りとなって、ふるえている本書は、避難区域に隣接する福島県中通り九市町村の二〇〇八年度出生児全員(調査時点では三〜四歳)とその母親(保護者)を対象としたアンケート調査の記録である。

放射能は目に見えない。よほど強烈でただちに症状が出るレベルでない限り、人は放射能に曝されてもその自覚がない。(中略)とりわけ、避難区域外の福島県中通り地域は、「ただちに健康に影響はない」とされ、放射能リスクへの対処が個人の判断に委ねられてきた。

その結果、「子どもを外で遊ばせる/遊ばせない」、「地元産食材を食する/食しない」、「避難する/避難しない」などをめぐって、同一地域内でも夫婦、家族、地域社会において亀裂が生じている。

その事故から四年。子どもの将来は大丈夫なのかという不安、放射能への対処をめぐる夫婦、家族、周囲の人との認識のずれ、食費や除染費用など原発事故への対処により生じた経済的負担感、補償をめぐる不公平感などは今も深刻であり(中略)こうした生活障害に対する補償や支援策がないまま、原発事故が風化し始めていることに母親自身、不安と焦燥を感じている。その意味で、今なお「終わらない被災の時間」が続いている。(本文より)

東京電力はもちろん、国や行政、専門家には、正確な情報と持続的で的確な精神的、経済的サポートが求められている。

アンケートの中から――
モルモットではない私達は決してアンケート結果だけを残すことを望んでいません。声を発信する方法のない私達、子ども達の為に、代わりに社会へ……どうぞよろしくお願い致します。」
原発事故後の子供についての不安なことなどを聞いてくれる所もなかったので、このようなアンケートをとってもらい、思いをぶつけることができて、よかったです。」
子どもの体や心についてのアンケートはこれまでもありましたが、母親の話、気持ちを問われることは少なかったように思います。」
こんなに詳しく原発事故による心理的な影響についてきかれたり、答えたりする機会は一度もありませんでした。調査内容に答えていくうちに心の中の整理ができ、自分がすべきことが見えてきた気がしていました。」




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