2016/03/09

除染に不安 学校再開「早すぎる」原発20キロ圏内 南相馬・小高区 /福島

2016年3月9日 新潟日報
http://www.niigata-nippo.co.jp/sp/news/national/20160309240069.html 

福島県南相馬市が、東京電力福島第1原発から20キロ圏内にある小高区での小中学校再開をめぐり、保護者の反発を受けている。市教委は8月にも再開する方針だが、多くの保護者は「時期尚早」と訴える。背景にあるのは除染への不信感。新潟市から昨春に南相馬に戻った女性は「20キロ圏内に娘を通わせたくない」と転校を決めた。帰郷からわずか1年、再度の選択は小高から離れる決断。背中を押したのは皮肉にも、市の帰還政策だった。

きしむ廊下、漏れる物音-。小高区の母校から約15キロ離れた鹿島区の仮設校舎には、小高の4小学校が同居する。

小高小の高野博幸校長は「学ぶ環境としては、施設が整った本校舎の方がいい。しかし通学の送迎や保護者の不安など全般を考えると一概に良しあしは言えない」とつぶやく。

福島事故前、小高区は4小学校に計約720人、小高中学校に約350人が学んでいた。事故で子どもたちはバラバラになり、鹿島区の仮設校舎に戻った児童生徒は4小学校は134人、中学は100人に激減した。

「警戒区域だった小高に、娘3人を毎日通わせたくない。除染をしても放射線量が戻るケースもあるし、治安も不安。市は解除を急ぎすぎている」。新潟市西区から昨春に南相馬へ戻った女性(41)は話す。

放射能の影響に不安があるが、悩んだ末に長女の中学進学に合わせて南相馬に帰郷した。小高区は避難指示区域で住めないため、鹿島区の借り上げ住宅から中1と小5、小4の娘は仮設校舎に通う。しかし8月に本校舎を再開する市教委の方針を知り、原町区の学校に転校させることにした。

南相馬市は、宅地など生活圏の除染完了をもって区域解除を4月以降に判断する。道路や農地の除染作業は解除後も続く。

小高中の保護者有志は宅地だけでなく道路、農地の除染も完了した上で学校を再開するよう求めた請願を市議会に出すなど、市に方針変更を求めている。しかし市教委は「学校を早く再開しなければ小高の復興はない」と繰り返す。

小高に戻らないことを決め、原町に居を構えることを決意した女性は「子どもたちは新しい環境になじもうと頑張った1年だった。4月からまた新しい環境になるが、3人は楽しみにしている」と、今は転校を前向きに捉えている。

市教委によると、本校舎を再開する予定の2016年度は、この女性の娘の3姉妹を含め小中学校で計30人ほどが転校する。小高の小中学校に通う子どもたちは、それぞれ80人ほどに減少する見込みだ。

仮設校舎の校庭で遊ぶ小高小学校の子どもたち=7日、南相馬市鹿島区

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