2016/03/10

<東日本大震災5年>損失 法的に守るべき

2016年03月10日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/local/hiroshima/news/20160309-OYTNT50208.html

◇福島から移住 弁護士・石森さん
東京電力福島第一原発事故からまもなく5年。県によると、東日本大震災を理由に、県内に避難した人の数は2月末時点で、164世帯386人で、うち82世帯210人が福島県内からだ。2013年に同県郡山市から県内に移住し、広島市で弁護士として活動する石森雄一郎さん(36)=写真=は、法律家の立場から避難者の支援に力を注ぐ。(山上高弘)


同県鏡石町出身。震災時はいわき市の裁判所にいた。「社会的信用のある立場の弁護士が真っ先に逃げ出したくない」と福島にとどまり、妊娠中の妻は実家のある広島市へ避難させた。

妻は被爆3世。被爆者差別など、放射能被害の苦しみには人一倍敏感だ。半年後に長女が生まれ、福島での生活を望むも、妻は「子どもを恐怖にさらしたくない」と、戻ることを拒んだ。

原発事故が家庭に亀裂を与え、離婚も頭をよぎった。それでも最後は「家族と離ればなれになりたくなかった」。2年に及ぶ別居生活に終止符を打ち、故郷を離れることを決断し、広島市に移った。

今は政府の「原子力損害賠償紛争解決センター」に裁判外紛争解決手続き(ADR)を申し立てるなどし、和解成立などを通して、避難者の生活を支える。避難対象区域内外の11世帯28人による国や東電を相手取った「福島原発ひろしま訴訟」では弁護団としてだけでなく、原告の一人として避難者とともに法廷に立つ。

「福島に残るか、避難するか。原発事故によって選択を迫られ、家庭や友人、地域が分断された。先の見えない不安や失ったものは法的にも守られるべきだ」と訴える。

広島では原爆投下から70年以上たった今日でも、多くの人がいまだに心に傷を負ったままでいることを知った。「広島と福島は簡単には比べられない。それでも人生を翻弄され、消えない不安と戦っているという点では同じだと思う。5年は決して区切りではない」
      ◇
東京電力福島第一原発事故で県内に避難している11世帯28人が、東電と国を相手取って、慰謝料など計3億800万円の損害賠償を求めた訴訟の第3回口頭弁論が9日、地裁で開かれた。

この日は福島県からの避難者2人が意見陳述。国が定める避難指示区域内である飯舘村から家族で避難してきた男性は「原発事故でそれまでの人生はすべて壊された。東電の賠償は一方的で納得がいかない」と訴えた。

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