2016/03/09

[大震災5年]避難者支援 変わる悩み把握したい

2016年3月9日 秋田魁新報
http://www.sakigake.jp/p/akita/editorial.jsp?kc=20160309az 


東日本大震災と東京電力福島第1原発事故によって本県に避難してきた人は1日現在、835人(337世帯)いる。古里に帰りたくても帰れない状況が、5年たっても続いている。本県としては避難者の声に耳を傾け、引き続き生活再建を支援したい。

本県への避難者は2011年12月の1571人(644世帯)をピークに徐々に減ってきた。現在の内訳は福島県が600人(224世帯)で最も多く、宮城県203人(96世帯)、岩手県32人(17世帯)と続く。

福島からの避難者の約8割(472人)は、原発事故の避難区域外からの自主避難者だ。このうち288人(102世帯)の住居は災害救助法に基づき、本県がアパートや民家などを借り上げ、福島県が費用を支払う形で無償提供されている。

福島県は、インフラ整備や除染が進むなど生活環境が整ってきたことを理由に、自主避難者への無償提供を来年3月で打ち切る考えだ。住宅の無償提供が打ち切られれば、生活が立ち行かなくなるケースも出てくるだろう。

自主避難者とは別に、避難区域から本県への避難者128人(58世帯)にも住宅が無償提供されており、無償提供延長の可否は福島県と国が毎年判断している。政府は来年3月までに線量の高い一部を除き避難指示を解除する方針だ。解除されれば避難区域からの避難者は、住宅無償提供の先行きが分からなくなるとの不安を抱いている。

避難者の多くは原発事故前に暮らしていた地域社会を喪失した。5年かけて本県で築いた人間関係や生活基盤を失わせるようなことがあってはならない。

避難が長引き、避難者の悩みは多様化している。子供を古里と秋田のどちらの高校に通わせるべきか、古里の高校を選ぶとすれば一家で転居すべきか悩む親がいる。母子避難から本県での一家同居に踏み切ったものの夫の職探しに苦労し、生活基盤を固められない家族もいる。
県が本県への避難者を対象に昨年8月にまとめたアンケートで、いま必要な支援を尋ねたところ、最も多かったのが「避難生活に対する助成」で、就労関係、医療費、子供の教育、放射線に関する相談などが続いた。

県は年間10人前後の避難者を嘱託の避難者支援相談員として採用し、戸別訪問を通じ要望や困り事を聞き取ってきた。避難者の気持ちは同じ境遇の人こそ理解できるとの考えからだ。
県内でも多くの個人や団体が支援を続けてきたが、多様化する悩みに解決策を示せないもどかしさも感じている。震災から5年のいま、どんな支援の在り方が望ましいのか考えたい。

支援に不可欠なのは、避難者が真に望んでいることを探り当てることだ。よりきめ細かく避難者の抱える課題を把握し、その解決に向けて手助けしていくことが求められる。

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