2016/03/09

自主避難、37%が20歳未満 子育て中の家族多く 毎日新聞調査


毎日新聞 2016年3月9日 
http://mainichi.jp/articles/20160309/ddp/041/040/020000c

東京電力福島第1原発事故で自主避難した人が事故前に住んでいた福島県の各自治体に対し、毎日新聞がアンケートしたところ、今年1月時点で把握している自主避難者約1万6000人の37%を20歳未満が占めていることが分かった。親の世代に当たる30代と40代も計36%に上り、放射線への不安を抱える子育て中の世帯の自主避難が長引いている実態が浮かんだ。【三上剛輝】

毎日新聞は、県内59市町村のうち国からの避難指示が出なかった48市町村(町が避難を指示した広野町含む)を対象に、県内外への自主避難者数と年代別の人数を聞いた。

総数は1万6063人だが、多くの自治体は、避難者が避難先で任意で届け出る総務省の「全国避難者情報システム」への登録数を基に集計しており、実態はさらに多いとみられる。

年代別は、10歳未満19・7%▽10代17・4%▽20代7・3%▽30代19・4%▽40代16・7%▽50代6・6%▽60代6・1%▽70代3・8%▽80歳以上2・7%▽不明0・4%。日本の総人口(2015年9月、総務省まとめ)の年代別割合は、20歳未満は17・4%。30代と40代は計27・0%。これと比べ、自主避難者は、20歳未満は37・1%、30〜40代も36・0%と、突出して多い。

自主避難者が事故前に住んでいた自治体は、郡山(4593人)、福島(4047人)、いわき(1290人)の上位3市で6割以上を占めた。

一方、国が避難指示を出した11市町村(解除された楢葉町など含む)のうち、強制避難者と自主避難者が混在している4市町村では、自主避難者は計約8000人と概算されるが、自主避難者だけの詳細な年代は把握していなかった。

福島県は、全国の公営住宅や借り上げ住宅に入居している避難者数などを基に、昨年10月末の自主避難者数を約1万8000人と推計している。これ以外にも、民間住宅などに入居した人が多数いるとみられ、実際の自主避難者数は分かっていない。
戻るか、とどまるか葛藤 福島県住宅無償提供打ち切りへ

「子供に原発事故の影響が無いところで暮らしてほしい」。福島第1原発から約50キロの福島県伊達市に住んでいた石河純さん(34)は長女(7)、次女(5)と、2011年6月から佐賀県鳥栖市に自主避難している。しかし、福島県は帰還を促すため避難先の住宅無償提供を来年3月で打ち切る予定で、福島に戻るのか、とどまるべきか、厳しい選択を迫られている。

石河さんの夫(42)は伊達市内で働いており、離ればなれで暮らす。家族をつなぐのはインターネットのテレビ電話「スカイプ」だ。夫は部屋の隅のパソコン画面から会話に加わり、毎朝4人で食卓を囲む。夫が娘に絵本を読むこともある。

震災発生時、石河さんは娘と自宅にいた。震度6の揺れに2人を抱いてとっさに車の中へ。カーナビのテレビを見ると津波が町を襲っていた。「うそだと思って消した」。原発事故のニュースに漠然と不安が募り、仙台市の実家を経て、自主避難者を支援していた県の中で遠隔地の佐賀を選び、鳥栖市の雇用促進住宅に避難した。

昨年6月、福島県が住宅無償提供を打ち切る方針を明らかにした。「いつまでも支援があるとは思っていなかった」が、支援が「ここにいる理由となっていたことも事実」だ。

福島に戻ることを夫や両親が望んでいることは分かっているが、娘のことを考えると放射能の不安が無くならないまま戻る決心もできない。

来年3月末で鳥栖を出るかもしれないと伝えると長女は「友達がいっぱいできた。これからも鳥栖に住みたい」と答えた。葛藤は深まるばかりだ。【岩崎邦宏】

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