2016/03/07

県内の指定廃棄物処分場問題 1カ所集約か、分散か 千葉市と国・他市平行線 /千葉

2016年3月7日 毎日新聞

東京電力福島第1原発事故で発生した指定廃棄物の処分場建設が暗礁に乗り上げている。環境省は、仮置き場での保管を続ける「分散保管」を茨城県に限って容認することを決めたが、千葉県に関しては認めない方針で、建設候補地の千葉市と、同省や他の保管自治体の主張は平行線のままだ。指定廃棄物の行方は宙に浮いたまま、震災から5年を迎えようとしている。
【橋本利昭、金森崇之】

「千葉市に指定廃棄物はない。分散保管を継続すべきだ」。昨年末、処分場候補地の東電千葉火力発電所での詳細調査を受け入れるよう求めた井上信治副環境相に、熊谷俊人市長はこう主張して、建設拒否の意向を伝えた。

放射性物質の濃度が1キロ当たり8000ベクレルを超える指定廃棄物は、県内10市で3690トンが保管されている。しかし、濃度は時間が経過すると低くなるため、環境省は今年1月1日現在では68%の2500トンに減少、10年後の2026年には41%の1510トンに減ると推計する。元々7・7トンしかなかった千葉市は既に全て8000ベクレル以下になったとみられている。

処分場候補地の選定方法は13〜14年の市町村長会議で了承された。その方法で最高の16点と評価されたのが火力発電所など千葉市の2カ所。だが、同市に指定廃棄物がないと仮定すると15点に減り、柏市の14カ所などと並ぶ。これが、千葉市が建設反対の姿勢を強める理由の一つになっている。

県内の指定廃棄物処分場の候補地となっている東京電力千葉火力発電所。
千葉市が建設受け入れを拒否し、先行きが見えない
=千葉市中央区蘇我町で本社ヘリから望月亮一撮影

しかし、千葉市の主張に対し、多くの指定廃棄物を抱える東葛地域の自治体は冷ややかだ。ある市の職員は「選定方法を決めた市町村長会議には、副環境相、知事、県内全行政の責任者まで出席した。そんな市町村長会議は県政史上初めてではないか。その場で決めた『県内1カ所』という基本ルールを覆すことになったら、何なんだということになる」と語気を強める。

一方で、環境省は8000ベクレル以下となった廃棄物の指定解除の手順を定める作業も進めている。量を減らして各地で難航する処分場問題の打開策にしたい考えだが、放射性物質の濃度が高い千葉県は、10年後に指定廃棄物が0・6トンに激減する茨城県などと異なり、減少量が少ない。環境省は「千葉は県内1カ所集約にすべきだ。指定解除する度に採点が変わって候補地選定をやり直すなんてことをしていたら、いつまでたっても決まらない」と、火力発電所に処分場を建設する方針を変えていない。

県内最多の1064トンの指定廃棄物を抱える柏市。昨年3月末で手賀沼終末処理場(我孫子市・印西市)での一時保管期限が切れ、柏市北部クリーンセンターなどに持ち帰る際、秋山浩保市長は環境省に足を運んで当時の副環境相に会い、将来、分散保管する考えのないことを確認した。その上で、現在の保管場所の地元住民を説得し、仮保管を受け入れてもらった経緯がある。

「千葉市が拒否し続けたら『県内1カ所に集約を』と強く主張している柏市に、地元で発生した分だけでなく全部が来ることにならないか」。放射能問題に取り組む住民団体メンバーの男性(63)は懸念する。

処分場問題について、森田健作知事は「一義的には国が責任を持って、千葉市としっかりと話していただきたい」と述べるにとどめ、静観する構えだ。茨城県での分散保管が決まった後の記者会見で秋山市長は厳しい表情でこう言った。「地元には千葉県の方針は変わっていないと説明している。(国には千葉市と)粘り強く交渉してもらいたい」

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