http://www.asahi.com/articles/ASJ373DB1J37UBQU00F.html
2月17日午前9時過ぎ、福島県いわき市にある小名浜(おなはま)魚市場。市内の七つの漁港で水揚げされた20種の沿岸で取れた魚が軽トラックで順に運び込まれてきた。だが、市場につきものの入札や競りはない。その代わりに、魚種ごとに放射性セシウムの濃度を測る検査が行われていた。
国の復興交付金など約56億円をかけて昨年3月に完成した真新しい市場に常設された検査室。魚種ごとに1匹ずつ、ミンチ状にして濃度を計測する。午後2時すぎ、結果が出た。18検体が検出下限値未満、残る2検体は1キロあたり15・8ベクレルと14・1ベクレルだった。
福島県漁業協同組合連合会は、国の出荷制限の基準値「1キロあたり100ベクレル」を超す魚が、万が一にも出荷されないように、「1キロあたり50ベクレル」の、より厳しい自主基準を課している。
原発事故後、県は漁業の魚とは別に福島沖の魚介類を採取して監視している。国の基準値を超えた検体は2011年に40%あったものの年々減り、昨年は8577検体を調べ、国の基準値超えは3月6日までに4検体。それ以降、今年の3月初めまで1検体もない。
原発事故が起きた福島県では12年6月から、小規模な操業と販売で出荷先での評価を調査している。魚種を限って県内や仙台、水戸、東京などの市場に卸している。3種から始め、72種まで増えた。
だが、あくまでも「試験操業」の段階。この日水揚げされた魚は計1トン。原発事故前の20分の1ほどの量だ。魚をよりわけていた長靴姿の年配の仲買人は「魚の数より作業する人の数の方が多いと思えるぐらい。参っちゃうよ」。
水揚げされた魚を仕分ける仲買人たち =2月17日、福島県いわき市の小名浜魚市場、岡本進撮影 |
漁業者には「休業賠償」として、震災前の水揚げ高の約8割が東京電力から支払われている。福島県漁連の野崎哲会長は「漁業者は本格的な漁の再開を待ち望んでいるのに、事故から5年もたち、仕事意欲がそがれないか心配だ。ただ、消費者の安心を得るまでには時間はかかるだろう。諦めずに一歩ずつでも進めていくしかない」と話す。
(いわき支局長・岡本進)
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