2016/05/09

福島/食品の放射性物質検査「知らない」36・7%

2016年05月09日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/local/fukushima/news/20160508-OYTNT50138.html

東京電力福島第一原発事故を受けて、県が実施している食品の放射性物質検査の2015年度の結果がまとまった。2万2707件を調べ、国の規制値を超えたのは海の魚など水産物や山菜・キノコなど18件だった。野菜・果物、全袋検査の米はゼロだったが、消費者庁の調査では、検査の実施自体を知らない人が3分の1以上おり、科学的な調査の結果が十分に浸透しているとは言い難い状況だ。

検査は、過去に放射性物質の検出が多かった食品や原発に近い地域の産品を重点的に実施されている。国の規制値は一般食品が1キロあたり100ベクレル、牛乳が同50ベクレルなど。

15年度の検査数は魚介類など水産物が9215件と最多で、野菜・果実は4585件、牛や豚、鳥などの肉は3969件、米を除く穀類は2724件、山菜・キノコは1562件に上る。卵や牛乳も検査されている。米の全袋検査では1048万袋(1袋30キロ)全てで問題がなかった。

ここ数年、規制値を超えるのは原発に近い海で取られた魚や山菜・キノコ、イノシシなど特定のもののごく一部に限られており、小山良太・福島大教授(農業経済学)は検査に億単位の予算や人手がかかることを理由に「初めて出荷される地域のものなどに限定し、原発から比較的遠い会津地方など、安全が証明されている産地では徐々に縮小するべきだ」と主張する。

県の検査では、郡山市の県農業総合センターが魚介類や野菜などを集中的に調べている。1ベクレル単位で濃度を測れる検査機器のゲルマニウム半導体検出器を11台備えており、同センター安全農業推進部の草野憲二副部長は「精度の高い検査が消費者の安心につながっている」と胸を張る。

だが、消費者庁が2月、全国の消費者を対象にした意識調査では、食品の放射性物質検査について「実施を知らない」と回答したのは36・7%。前年より2ポイント増えた。日々、積み上げられた安全性を示すデータが一部の消費者には十分に伝わらず、PRにも限界があることを示唆している。(星野達哉、市原佳菜子)



検査前にキュウリを刻む職員ら
(郡山市で)

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