2016/05/04

東電・除染土の再利用:環境省方針撤回を求め1万人署名

2016年5月4日 まさのあつこ
http://bylines.news.yahoo.co.jp/masanoatsuko/20160504-00057347/


東京電力の福島第一原発事故を原因として発生した除染土を8000ベクレル/kg以下にして公共事業に使う方針で、環境省が動き始めている。

5月2日に議員会館で、その撤回と、前提となる帰還政策の見直しを求める集会が行われ、FoE Japanらが呼びかけた1万305筆の署名が、環境省の除染・中間貯蔵企画調整チームに手渡された。

福島第一原発事故後、国は避難住民の「帰還」と「復興」を目的として、福島県を中心として「除染」を行ってきた。その総量は最大で計2200万m3になると環境省は推計している(内訳:10万ベクレル/kg=最大で1万m3、8000ベクレル/kg超10万ベクレル/kg以下=約1000万m3、8000ベクレル/kg以下=約1000万m3)。(*)

これらを30年以内に福島県外に運び出し、最終処分することを条件に、一時、県内の中間貯蔵施設に搬入する。

ゼネコン/大学/コンサルタントに税金を投じる事業

今回の検討は、その量を減らすことを目的に2015年7月に始まった。10万ベクレル/kg以上の高濃度汚染土が、30年後にはその7割が8000ベクレル/kg以下になると想定し、具体的には以下のように、汚染土を減容化・再利用する技術開発を行うことを旨に「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会」を立ち上げ、ゼネコンや大学やコンサルタント業者に税金を投じる事業である。

出典:中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会(第1回)
資料 5-1



















宅地や公園緑地で除染土を再利用

驚いたことに、河川堤防や、宅地や公園緑地、水面の埋立、空港や鉄道の盛土、海岸防災林などの用途で使うシナリオを描いている(下図)。

一方、人体への影響については、「除去土壌等の再生利用に係る放射線影響に関する安全性評価検討ワーキンググループ」(以下、WG)で4回にわたり非公開で議論されたことが、4月13日の参議院復興特別委員会での山本太郎議員の質問により初めて明らかとなった。

環境省はそのことを一切、明らかにしないまま、3月30日までに、自らが案を書いた案を検討会委員に了承させ、4月8日、環境省として「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略」を工程表と共に取りまとめた。

出典:中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会(第1回)資料6


放射線防護策の破壊

5月2日の集会で手渡された丸川珠代環境大臣宛の「全国に被ばくを強い、環境を汚染する『8000ベクレル/kg以下の汚染土を全国の公共事業で利用』方針に反対」署名は、以下の4点を求めている。
1.除染土を公共事業で利用する方針の撤回、
2.「除染」「帰還」を前提とした除染土再利用の政策の見直し、
3.除染、除染土の処分の検討への福島県内外の住民参加、
4.WGのメンバー、議事録、全資料の公開。

その背景には放射線防護策の破壊とも言うべき方針転換がある。事故前は原子炉等規制法で「廃棄物を安全に再利用できる」基準を100ベクレル/kgとしていた。事故後に成立した「放射性物質汚染対処特措法」ですら、8000ベクレル/kgは「廃棄物を安全に処理する(=捨てる)ための基準」と定めていた。今回の方針が実施されれば、捨てる基準だった8000ベクレル/kgが、身近な資材として利用される基準となる。

FoEの満田夏花さんは「国は、除染、帰還、復興を三位一体で勧めているが、いろいろな人を巻き込んでこれを撤回させなければならない」と訴えた。

放射線審議会に諮問を

会場には、福島県内外から参加者が駆け付け、安全評価については「放射線審議会に諮問した方がいいのではないか。環境省が一人で決めるのはマズイ」などの指摘が行われ、環境省の除染・中間貯蔵企画調整チーム、山田浩司参事官補佐は「必要とあらば」と回答した。

また、居住制限区域となった福島県富岡町から会津若松市に避難中の古川好子さんは、「富岡町では意向調査に答えた人だけで20%しか帰らないと回答した」と述べ、「帰還させることを前提に、戻る気がない世帯にも除染を勧め、不必要に除染土を増えている実態」をなんとかすべきだと発言した。

下請け→元請け→環境省による除染の押しつけ

集会終了後、除染が避難世帯にどのように勧められるのかを古川さんに尋ねると、避難先に電話がかかってくる実態が明らかになった。古川さん宅の場合、避難後、最初の2年間は、除染の下請け業者から電話がかかってきたのだという。

「最初は、除染を『どうされますか』と。1カ月に1回ほど電話がかかってくるので、そのたびに『帰れない』と断り続けていたら、2年目になると『業者が変わるから』と担当から連絡があって(笑)、3年目はウチは鹿島(建設)からだったと思うけど、また『どうするか』と。だからまた、『帰れない』というと『そこはご相談の上・・・』という調子で10回ぐらいはかかってきたかなぁ」

そして、ついに4年目以降は環境省の福島事務所からで、また断ると、「『そうは言っても、回りは皆、終わっている』とか言って、平成27年9月だか10月だかが最後だが、いいんですかとか言われました。『(除染が)終わるんですか?』と聞くとそうでもないようで」と呆れた様子で話す。

今年は環境省(庁)が設立されるきっかけとなったとも言える水俣病の公式確認から60年が経つ。「帰還」ありきで不必要な除染土を増やし、「減容化」の名の下で放射線源を全国の公共事業に産官学でばらまく技術を開発しようとする環境省の今を、水俣病の被害者たちはどのように見ているだろうか。

(*)訂正および加筆:「除染で出る高濃度に汚染された10万ベクレル/kg以上の土は、最大で2200万m3になると環境省は推計している」は、正しくは上記「内訳:10万ベクレル/kg=最大で1万m3、8000ベクレル/kg超10万ベクレル/kg以下=約1000万m3、8000ベクレル/kg以下=約1000万m3」でした。訂正してお詫び致します。

署名を受け取る環境省の除染・中間貯蔵企画調整チーム
山田浩司参事官補佐(筆者撮影)

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