2015/06/02 福島民報
http://www.minpo.jp/news/detail/2015060223176
東日本大震災と東京電力福島第一原発事故に伴う仮設住宅の入居期限延長に向けた国、県の協議が進んでいる。避難区域が今も存在する中、来年3月の期限をもって仮設住宅を廃止するわけにはいくまい。しかし、空き室の増加による入居者の孤立、仮設住宅のコミュニティーの維持など課題は複雑・多様化している。実情に応じた対策が求められる。
県によると、県内の仮設住宅1万6607戸のうち、空き室は4月末現在、全体の三割に当たる4993戸に上る。入居者の年齢層を見ると、大半が高齢者の所も少なくない。入居者の減少や入居世帯の高齢化に伴い、安否確認に携わる人手が不足したり、仮設住宅の自治組織が解散したりする例が相次いでいる。手だてを講じなければ孤立化が進みかねない。
復興庁は、今年度で終了する全額国費の雇用支援事業に替わり、見守り活動や避難先のコミュニティー形成事業などへの新たな予算措置を検討するという。現状を踏まえれば、当然の対応だ。県と郡山、いわき両市には生活支援相談員の配置などへの交付金が配分された。孤立を防ぐための対策を推し進めると同時に、空き室対策にも重点的に取り組む必要があるのではないか。
南相馬市は今年度、被災者ではない医療関係者や警察官らに空き室を提供する「目的外貸付」を始めた。浪江町民が避難する福島市の仮設住宅には、福島大災害ボランティアセンターの学生が復興庁の事業として6月から一年間、住むという。こうした取り組みが広がれば、入居者の安心・安全の確保にもつながる。特別な予算がなくても、日常的な見守り態勢も整う。
仮設住宅に住み続ける理由はさまざまだ。借り上げ住宅に引っ越すと、さらに孤立するのではないかという懸念の声を数多く聞く。浜通りの賃貸住宅は満杯で、移りたくても物件がない。災害公営住宅の整備も進んでいない。こうしたひずみが入居者にのしかかっている。
災害公営住宅については、入居者を募っても集まらなかったり、申し込み後に辞退したりする避難者も多い。避難が長期化する中、行政と避難者間の意識のずれが顕在化している表れと言える。
災害から5年目を迎えた現在の状況に、今の計画が合っているのかどうか。避難者のより良い生活環境を考える上で、仮設住宅や災害公営住宅の配置の在り方などをあらためて検証する視点も欠かせない。
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