http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/list/201603/CK2016032802000181.html
東京電力福島第一原発事故に伴い、福島県で増加が懸念されている子どもの甲状腺がんをテーマに、栃木県内で甲状腺の定期検査を実施すべきかを考えるシンポジウムが27日、大田原市本町の市総合文化会館で開かれ、有識者が意見を交わした。事故から5年が経過した今もなお、放射線の汚染被害に悩む県北部の参加者からは、健康への影響を不安視する声が上がった。 (中川耕平)
登壇したのは、放射線医学が専門で国際医療福祉大クリニック(大田原市)の鈴木元(げん)院長と、疫学が専門の岡山大大学院環境生命科学研究科の津田敏秀教授。
福島県では、事故当時十八歳以下だった約三十八万人を対象に、国費で放射性物質がたまりやすい甲状腺の定期検査を続けている。二〇一一年十月~一四年三月の検査では、百十三人が「悪性または悪性の疑い」と判定された。一方、栃木県では実施を求める声があるが、実現していない。
鈴木氏は、福島県の定期検査では高精度の超音波検査器が使われ、増殖が止まっていたり、身体に悪影響を及ぼすことのない極めて小さいがん細胞が見つかった「過剰診断」の結果と指摘。放射線の影響とは考えにくいとして、「被ばくのリスクがほとんどない栃木県では、集団検診の必要はない」と述べた。
「県内での定期健診は必要ない」と主張する鈴木氏=大田原市で |
一方、津田氏は一九八六年のチェルノブイリ原発事故後、周辺で甲状腺がんが多発したデータを根拠に、福島県でも今後さらに増える可能性が高いと主張。「福島で多発している以上、県北部でも同じように起きていると考える。どれだけのがんが生じているのか、症例の把握を徹底すべきだ」と訴えた。
「症例の把握を徹底すべきだ」と訴える津田氏=大田原市で |
◆参加者からは実施論相次ぐ
参加者からは「子どもや孫を持つ立場からすれば、(定期検査が実施されない)現状は苦痛でしかない」「県北部でも検査するのが合理的だ」との意見が相次いだ。
シンポジウムは、県北部で民間の甲状腺検査や講演会活動を続けている住民団体「311『つながる、つたえる、そして未来へ』集い実行委員会」が主催。約二百二十人が参加した。
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