2015年6月6日 朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/DA3S11795542.html
甲状腺がんと診断された韓国の原発周辺の住民が、原発を運営する公営企業に損害賠償を求める訴訟を相次いで起こしている。ある女性患者について、裁判所が判決で「原発から出た放射線に長くさらされ、がんになった」と認め、企業側に賠償を命じたことがきっかけになっている。
韓国の南東部にある古都・慶州(キョンジュ)には、日本海沿いに5基の原子炉が並ぶ「月城(ウォルソン)原発」がある。
抗議集会に連日加わる農業の黄粉熙(ファンブンヒ)さん(67)の自宅は原発から約915メートル。1号機が商業運転を始めてから30余年、原発に最も近い集落で暮らす。「原発は電気をつくる工場ぐらいに考えていた」と黄さん。東京電力福島第一原発の事故後、体のだるさが心配になって検査を受けると、甲状腺がんが見つかり、すぐに手術を受けた。集落では、ほかにも甲状腺がんの患者が確認された。
その後、釜山市の「古里(コリ)原発」から7・7キロ離れた所で約20年暮らし、3年前に甲状腺がんの手術を受けた女性(48)が韓国の全原発を運営する公営企業「韓国水力原子力(韓水原〈ハンスウォン〉)」に勝訴したと聞いた。
この釜山地裁判決(昨年10月)は、別の公害訴訟で大法院(最高裁)が示した判断基準を原発にあてはめ、「加害企業が無害だと証明できなければ責任を免れられない」と指摘。原発と甲状腺がんの因果関係を認めて、1500万ウォン(約168万円)の賠償を命じていた。
「私も原発の被害者」。女性と同じようにがんの摘出手術を受けた黄さんはこう思い、昨年末に韓水原を相手に提訴した。こうした動きは計23基がある4原発すべての周辺住民にも広がり、甲状腺がんと確定診断を受けた計545人の患者が昨年12月~今年4月に訴訟を起こした。大半が原発から10キロ圏内に暮らす人たちで、原告数は家族を含めると2500人を超えた。(中野晃)
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