2015年04月04日 毎日新聞
http://mainichi.jp/shimen/news/20150404ddm001040167000c.html
◇事故4年、国が全額負担
東京電力福島第1原発事故の避難者が住む「みなし仮設住宅」の家賃について、事故後4年を過ぎても、国が全額負担したまま、東電に一切請求(求償)されていないことが分かった。東電は避難指示を受けた人の家賃負担は請求に応じる意向だが、自主避難者分について難色を示し、これに経済産業省も同調している上、国か福島県のどちらが請求するかさえ決まらないまま全て棚上げされているという。避難者問題に詳しい識者は「自主避難者を被害者と認めたくない東電と国の姿勢がうかがえる」と批判している。
同様に求償対象の除染費用については環境省などが2012年以降、2291億円を東電に請求し、自主避難者が住んでいた避難指示区域外も含め1217億円を東電が支払っている。
被災者向けに民間賃貸住宅などを借り上げるみなし仮設は原発事故直後、福島県全域に災害救助法が適用されたため、避難指示の有無に関係なく自主避難者にも無償で提供された。その費用は避難者を受け入れた各都道府県が福島県にいったん請求し、福島県がとりまとめ、国が実質的に全額負担している。同法を所管する内閣府によると、福島県関係の災害救助費は13年度で317億円、14年度は予算ベースで287億円。その多くはみなし仮設の家賃とみられ、本来東電が持つべき負担を税金で充当し続けていることになる。
関係者によると、12年春、当時同法を所管していた厚生労働省が東電や経産省と交渉を始め、厚労省と東電は同年8月、避難指示区域内からの避難者の家賃は東電による賠償対象になると福島県に通知した。みなし仮設の家賃も賠償対象との見解で一致している。
しかし、国の原子力損害賠償紛争審査会が避難者の精神的賠償について、避難指示を受けている人には1人当たり月10万円の賠償額を示す一方、自主避難者は計12万円(子供・妊婦は計72万円)の賠償にとどめたことから、東電と経産省は両者を同等に扱い自主避難者にも家賃を支払うことに難色を示しているという。
請求主体も決まっていない。1999年に茨城県東海村で起きたJCO臨界事故では茨城県が救助費用を業者に請求したため、厚労省は13年5月、福島県などが東電に請求する仕組みを導入しようと模索したが、福島県は「全額を負担している国が請求すべきだ」として押しつけ合う状態だ。
内閣府の担当者は取材に「東電が支払おうとしないものは請求できない」と話し、自主避難者分を請求から外す可能性も示唆した。
内閣府の姿勢について、原発避難の賠償に詳しい除本理史(よけもとまさふみ)・大阪市立大教授(環境政策論)は「自主避難者分の負担を国などが請求しないのは、事故の被害者として認めたくない姿勢に他ならない。事故の責任を明確にする作業を避ける国と東電の無責任ぶりがよく表れている」と話している。
◇自主避難者への損害賠償
原子力損害賠償紛争審査会は中間指針第1次追補(2011年12月)で国の避難指示区域外にある福島市や郡山市、いわき市など対象23市町村からの自主避難者と自宅滞在者に一律8万円(18歳以下と妊婦は40万円、実際に避難した場合は20万円上乗せ)の定額賠償を示した。さらに中間指針第2次追補(12年3月)に基づき、東電は12年12月に1人4万円、子供と妊婦は12万円を追加賠償すると発表。一方で指針は「個々の事案ごとに判断すべきもの」とし、国の原子力損害賠償紛争解決センターによる和解仲介手続き(原発ADR)では基準を上回る賠償を認めるのが一般的だ。
みなし仮設住宅の家賃負担の流れ |
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