http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201607/20160720_63026.html
東京電力福島第1原発事故に伴う福島県内の除染土を全国の公共工事で再利用する環境省の方針に疑問の声が上がっている。国は事故前、原発の廃炉で出る廃棄物の再利用基準を「1キログラム当たり100ベクレル以下」と定めたが、今回は80倍に当たる「同8千ベクレル以下」とする基準を新たに設けた。同省は「コンクリートや土で覆い、適切に管理すれば100ベクレル以下と同程度の被ばく線量に抑えられる」としているが、受け入れが進むかは不透明だ。
除染で出た土などの廃棄物は最大約2200万立方メートル(東京ドーム18杯分)に上り、国の計画では、第1原発周囲の中間貯蔵施設で最長30年間保管する。その後、福島県外で最終処分する予定だが処分場確保が難しく、再利用は、全体量を減らすための苦肉の策だ。
再利用は、管理責任が明確で、長期間掘り返されることがない道路などの公共工事に限定。放射性セシウム濃度を1キログラム当たり5千~8千ベクレル以下と設定し、工事に携わる作業員らの被ばく量を抑えるとしている。
一方、廃炉廃棄物の基準は2005年、当時の経済産業省原子力安全・保安院が導入。遮蔽(しゃへい)など管理をしなくても被ばく線量が健康への影響を無視できる年間0.01ミリシーベルト以下になるよう放射性核種ごとに基準を設定し、放射性セシウムは同100ベクレル以下とした。
基準を高くすればそれだけ再利用できる量は増え、8千ベクレル以下の場合、技術的には99%以上、再利用できる計算だ。ただ、実際には100ベクレル以下の基準をクリアした廃炉廃棄物さえ一般の受け入れは進んでおらず、いまだ原子力施設内でのブロックや遮蔽材への利用にとどまっている。
環境省が「8千ベクレル以下」の基準案を示した3月末以降、原子力規制委員会の田中俊一委員長が記者会見で「一般論として見れば、同じ放射能で汚染されたものが、(扱いが)違うということはよくない」と異議を唱えたほか、環境保護団体「FoEジャパン」は「環境汚染を防ぐことはできない」として方針の撤回を求める約1万5千人分の署名を提出するなど波紋が広がったが、環境省は6月末、正式決定に踏み切った。
環境省は再利用の対象を日本全国としているが、同省幹部は「福島県外での利用は地元の強い反発が予想され、現時点では現実的ではない。県内の実証事業を通じて安全に管理する方法を確立し、理解を広めていきたい」と打ち明けた。
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