2011/09/26

福島での「子ども健康相談会」を取材してきました

福島市内に拠点を置く「市民放射能測定所(CRSM)」と「子供もたちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」が9月23日、「子ども健康相談会」を福島市内で開催しました。6月、7月に続き、今回で4回目となる相談会には、40家族100名(うち、子ども60名)が訪れ、ボランティアで参加した医師ら13名に、健康や生活のアドバイスを受けていました。その様子を取材させていただきましたので、ご紹介します。

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■ ホールボディーカウンターの数値を医師に相談



「数値は思ったより低かったけど、今後子どもに影響が出るんじゃないかと思うと心配で……」
そう話してくれたのは、福島市内に住む斎藤香さん(仮名・31歳)。
3月の水素爆発後、香さんは水をもらうため、3歳の娘・理央ちゃんと、屋外で長時間並んでいたとのこと。
そのため、「内部被ばくさせてしまったのではないか」と、香さんは心配しているのです。この日も、3歳の娘・理央ちゃんと一緒に健康相談会を訪れていました。

香さんが言う“数値”とは、ホールボディーカウンターの数値のこと。「市民放射能測定所(CRSM)」は今年8月、「未来の福島こども基金」と「DAYS放射能測定器支援基金」からホールボディーカウンターの寄贈を受け、今回の健康相談会から導入。ホールボディーカウンターでの検出数値も含めて、健康状態や生活の様子などまで医師とゆっくり相談できる体制を整えていました。

ホールボディーカウンターでの計測は、内部被ばく量がすべて分かるものではありませんが、現時点で体内に残留しているセシウム137の量を計測することはでき、ある程度の目安にはなるそうです。

幸いなことに、理央ちゃんのセシウム137の数値は、現段階では機械の検出限界である300ベクレルを下回っており、誤差値の範囲内でした。とはいえ、まったく安心というわけではないようです。

理央ちゃんを担当した医師は、「少量の内部被ばくについてのデータがないので、確かな答えはありません。これからも継続的に測定し、今後も検出されなければ心配ないでしょう。免疫力を上げるため、バランスの良い食事をとること、除染された地区で体をのびのび動かすことが大事です」と話してくれました。

香さんは事故以来、理央ちゃんを外で遊ばせていないと言います。
「車で公園を通りかかると、『ママ、ブランコに乗りたい』って言われるんです。でも、『ごめんね、今は外で遊べないのよ」と説明しています」と、香さん。
香さんは、もうひとりお子さんが欲しいそうですが、「現状がいつまで続くのか、もし生まれてくる子どもに影響が出たら」と思うと、踏み切れないでいます。
今後のことを尋ねると、「できれば避難したいけど、仕事のことを考えると難しい。国から避難命令を出してほしいですね。それが一番の願いです」と話してくれました。

もっとも痛々しかったのは、わずか3歳の理央ちゃんが、保育園から配られたというガラスバッチ(線量計)を、終始首からぶら下げていたこと。
そのストラップには、「がんばろう福島」と書かれていました。私が、「理央ちゃん、そのガラスバッチ見せて」とお願いすると、理央ちゃんは、小さくかわいらしいその手で、ガラスバッチを私のほうに差し出してくれました。

DSC_0306.JPG

このガラスバッチは、自分では被ばく数値が確認できない仕組みになっているため、月に1回回収し、業者で線量がチェックされるとのこと。ガラスバッチの配布期間は2ヶ月間で、その後継続されるのかどうかは未定なのだそうです。



■ 心配なのは、今後の蓄積

「市民放射能測定所」の発表によると、今回、ホールボディーカウンターを受けた100名のうち、機械の検出限界300ベクレルを超える数値が出た人はいなかったそうです。
「まずは一安心」と言いたいところですが、チェルノブイリの子どもたちを長年支援し、今回はボランティアで相談会に参加していた小児科医の黒部氏は、「心配なのは今後の蓄積だ。晩発性障害は5年後、10年後に起きる」と警鐘をならしています。

また、「こどもたちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」の代表・山田氏も、「もし今後、高い検出値が出たとしても、特に対処法がないのが現状」と打ち明けてくれました。
現段階では、放射能を体外へ排出するための科学的根拠が裏打ちされた方法がないため、「汚染地域から避難して、なるべく汚染されていない食べものを摂取するしか手立てはない」のだそうです。
この日参加した医師の中には、「このまま黙って子どもたちが被ばくし続けるのを見ていられない。今こそ全国の医師たちが一致団結して、声をあげなければ」と、強い危機感を持って憤る人もいました。
しかし、彼らのように行動を起こしている医師は、ほんの一握りにすぎません。なぜなら、放射線が人間に及ぼす影響の多くが、まだ解明されていないからです。
とはいえ、チェルノブイリを超えるほどの規模にまで拡大した福島第一原発の事故。いくら臨床データが乏しいといえども、チェルノブイリの周辺国ベラルーシでは事故から25年経った現在、「健康な子どもがわずか2割しかいない」という現実があります。こうした事実から目を背けることなく、予防原則にもとづいて対処しなければ、子どもたちに被害が及ぶのは免れないでしょう。


「放射線市民測定所」と「子供たちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」では、今後も継続的に健康相談会を開き、子どもたちの様子を注意深く見守っていくそうです。


(取材・文 和田秀子)
<Moms to Save Children from radiationより転載 http://mscr.jp/>

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