2013/01/13

手抜き除染、作業員証言 「詰め切れぬ葉は捨てて」指示

朝日新聞2013/01/04朝刊より引用
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手抜き除染」横行の情報を得て、取材班は現地に向かった。
 「袋に詰めなければならない草木をここに捨てました」。20代男性が取材班を案内したのは、県道から20メートルほど斜面を下りた雑木林だった。枯れ葉や枝が幅1メートル、長さ50メートルにわたり散乱し、高い所は1.5メートルほどの山になっている。
 福島第一原発から南に15キロの福島県楢葉町。昨年8月に警戒区域が解除された後も大半が避難指示解除準備区域に指定され、町民は住んではいけない。
 楢葉町の除染を受注したのは、前田建設工業や大日本土木などの共同企業体(JV)。作業ルールでは道路の両側20メートルの幅で草木や土を取り除き、袋に詰めて仮置き場に保管しなければならない。空間線量を毎時0.23マイクロシーベルト以下に下げていく長期的目標の第一歩だ。
 男性は昨年10月、都内のハローワークで3次下請け会社の求人を見つけ、働き始めた。道路の両側20メートルにはったピンクのテープの内側で、のこぎりで木を切り、草刈り機で刈り取った草や落ち葉を熊手でかき集めて袋に詰め、運び出す作業のはずだった。
 ところが、大日本土木の現場監督は当初から、作業班約30人に「袋に詰め切れない分は捨てていい」「テープの外の崖に投げていい」と指示し、作業員らは従った。監督が不在の日には別の監督役から同じ指示があったという。
 男性は納得できなかった。大きな袋を抱えて斜面を上り下りするのは確かに大変だが、これで除染したと言えるのか――。
 作業開始から1カ月余りたった11月27日、男性は現場監督にただした。そしてそのやりとりを録音した。
 男性「落としちゃっていいんですか」
 監督「うんうん、OK。しょうがない」
 監督は「自然に葉っぱがたまったんでしょ、そういうのは」とも言った。辺りは落ち葉が散らばり、人影はない。ばれないと思っているのだろう、と男性は感じた。
 男性「環境省から言われたんですか」
 監督「いや、まわりから言われて」
 「まわり」とは誰なのか問い詰めず、男性は指示に従ったという。男性は年末、投棄させられたことを環境省に通報した。
 鹿島JVが受注した田村市の山林で働いた3次下請けの40~50代の4人は11月16~17日、川沿いの斜面で落ち葉や枝をかき集め、川に捨てるように指示されたと証言した。計3立方メートルほど投げ込んだ。川は茶色く濁ったという。
 取材班はこのうちの1人の男性(43)に現場を案内してもらった。川の縁にある崖の下に落ち葉が山積みになっていた。男性は富山県から来て、12月26日に作業を終えた。「命令とはいえ、川を汚してしまった。申し訳ない」と取材に語った。

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