2016/04/16

淡水魚の放射性物質の汚染メカニズム探る 発信器で追跡、阿武隈川の外来ナマズで/福島

2016年4月16日 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160416/ddl/k07/040/009000c

福島大と京大、県内研究グループ

東京電力福島第1原発事故による淡水魚の放射性物質の汚染メカニズムを探ろうと、福島大と京都大、県内の研究グループは、福島市の阿武隈川に生息するアメリカナマズに小型の超音波発信器を取り付け、行動を追跡する調査に乗り出した。

正式名は「チャネルキャットフィッシュ」と呼ばれ、大きいものは1メートルを超える。他の魚より放射性物質の濃度が高いため、対象魚種に選んだ。在来種の魚を食べる有害外来魚で、調査結果を効果的な駆除にも役立てる。

福島大や県が、流域でアメリカナマズの放射性セシウム濃度を調べた結果、ブラックバスやコイ、フナと比べ高かった。雑食性で小魚やカブトムシ、木の実などを食べるため、他の魚よりも濃度が高かったと考えられる。今回、行動を詳細に調べ、どこでどのようにして放射性物質に汚染されるか解明する。

調査は今年3月から来年10月ごろまで、福島市の山中の川幅約100メートル、約2キロにわたる流域で実施。捕獲したアメリカナマズ24匹に長さ約4センチで円筒形の発信器を埋め込んで再び川に放した。水中に設置した受信器で、魚から発信されるデータを受け、行動する時間帯や範囲、水深を調べる。

調査結果活用し効果的な駆除も

県内最大で、宮城県まで流れる阿武隈川は、原発事故でヤマメやイワナなどが国の出荷制限を受け、地元漁協は漁業や釣りを自粛。近年は、外来魚の増加も悩みの種となっているが、アメリカナマズは詳しい生態が分かっていないのが実情だ。今回の調査で生態を明らかにし、効果的な駆除方法も探る。

福島大の和田敏裕准教授は「汚染メカニズムを明らかにするとともに、漁業再開に向けて駆除にも役立てたい」と話している。
7種が出荷制限、未解明部分多く

原発事故の影響で、県内では河川や湖沼の天然魚のうち、一部流域のアユやイワナ、ヤマメなど7種類が国の出荷制限や摂取制限の対象となっている。宅地や農地を除き、森林の除染はほぼ手付かずで、土壌や木片に付いた放射性物質が淡水魚の汚染に与える影響など未解明な部分も多い。

福島大や県などによると、淡水魚は海の魚に比べ、放射性物質濃度の基準値を超える割合が高く、下がり方も鈍いとされる。

淡水魚は、体内の塩分を調節する過程でカリウムなどをためやすく、化学的性質が近いとされる放射性セシウムが、いったん体内に取り込まれると排出されるまでに時間がかかるためとみられる。

一方で水に含まれるセシウムを魚が体内に取り込む量は少ないとされ、餌などが管理され整った環境で飼育される養殖魚は、汚染が避けられることも分かってきている。

■ことば
アメリカナマズ
米国などが原産の外来魚。国は2005年、ブラックバスやブルーギルとともに特定外来生物に指定し、輸入や飼育は原則禁止されている。流れが緩やかな河川や湖に生息し、茨城県や栃木県、千葉県の関東地方のほか、岐阜県、滋賀県、島根県などに分布。県内の阿武隈川では05年に初確認された。ハゼやエビなど漁業資源に被害が出ている一方で、茨城県の霞ケ浦や岐阜県では食用としての養殖も行われている。

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