10月1日、川内村の避難指示が解除されるとの発表がありました。都路に続く解除です。なぜ、解除されるのか。放射線量が下がったから? 確かに除染と自然の減衰(半減期等による)で、下がったというのは事実でしょう。でも、安心して住んでいいほどに下がったのでしょうか。いえ、決してそうではありません。少なくても、いまだ、川内村の農産物は出荷停止になっています。
避難中には、政府から生活費が支給されます。しかし、帰還していいことになれば、たとえ避難を継続していても、その補償は打ち切られます。そうやって生活を追い込まれてしまえば、もし、まだ不安を抱えていたとしても、帰還を選択するしかない状況に追い込まれます。
子ども・被災者支援法が条文でうたっている、居住する人、避難する人、帰還する人、どの選択をした場合にも補償するという施策は、どこへ吹き飛んでいったのでしょう。これは、国会で全員一致で決めたはずの国の法律なのです。
川内村の次は、また避難解除が続くのは目に見えています。こうして帰還政策を、放射線値を無視したように推進していけば、避難している家族や母子は経済的にも、精神的にも追い込まれていきます。決して100%を反映しないガラスバッジで住民の被ばくを管理し、住民全体の平均の外部被ばくだけで1ミリシーベルトのギリギリまでの被ばくであれば安全として被ばくを強要するのが、今の帰還のやり方です。まして、川内村はその20倍の20ミリシーベルト以内である、という緊急時における放射線値そのままの基準で解除されてしまいます。
「避難解除」と聞いて、あぁよかったね、と言えるわけじゃないことを、多くの市民は知らないまま、このニュースを聞くのかもしれません。複数の関連記事を上げておきます。この記事の影に、避難している母子の悲鳴が聞こえてくるようです。
政府 川内村の避難指示解除決定
政府は、原子力災害対策本部などの合同会議を開き、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、福島県川内村の一部に出されている避難指示を来月1日付けで解除することを決定し、安倍総理大臣は住民の帰還を積極的に支援していく考えを示しました。
政府は、安倍総理大臣とすべての閣僚による原子力災害対策本部と原子力防災会議の合同会議を総理大臣官邸で開き、東京電力福島第一原子力発電所の事故で、福島県川内村の一部に出されている避難指示を来月1日付けで解除することを決定しました。
これを受けて安倍総理大臣は、「避難指示の解除はゴールではなく、復興に向けた出発点であり、解除のあとも一層強力に支援していく」と述べ、住民の帰還を積極的に支援していく考えを示しました。
これを受けて安倍総理大臣は、「避難指示の解除はゴールではなく、復興に向けた出発点であり、解除のあとも一層強力に支援していく」と述べ、住民の帰還を積極的に支援していく考えを示しました。
10月1日に川内村の避難指示を解除 政府原子力対策本部が正式決定
産経新聞 2014.9.12
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140912/dst14091214090008-n1.htm
政府の原子力災害対策本部会議は12日、東京電力福島第1原発事故に伴う福島県川内村の避難指示区域のうち、年間被曝(ひばく)放射線量が20ミリシーベルト以下の「避難指示解除準備区域」(139世帯275人)について、10月1日に解除することを正式に決定した。
福島県の避難指示の解除は、今年4月、田村市の都路地区が解除されたのに次いで2例目。会議では、年間被曝放射線量が20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下の「居住制限区域」(18世帯54人)を、10月1日に「避難指示解除準備区域」に再編することも決まった。
また政府は、年間被曝放射線量が50ミリシーベルト超の「帰還困難区域」での通行が制限されていた国道6号について、除染や道路の補修が完了したことなどから、9月15日に制限を解除し、全ての自動車が通行できるようにすると発表した。6号の開放は、原発事故直後に通行が制限されて以来。
福島・川内村、10月に避難指示解除 政府が正式決定
2014/9/12 12:17 日経新聞http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF12H07_S4A910C1EAF000/
政府は12日に開いた原子力災害対策本部(本部長・安倍晋三首相)の会議で、福島県川内村の一部に出した避難指示を10月1日に解除すると正式に決めた。東京電力福島第1原発事故後に出した避難指示を解除するのは、4月の田村市都路地区に続き2カ所目となる。川内村で帰還が可能になる住民は275人。
川内村の避難指示区域は3月までに放射性物質の除染を終えた。帰還に必要な村道などインフラの復旧が進んだため、避難指示の解除を判断した。
川内村は面積の35%が年間積算線量が20ミリシーベルト以下の避難指示区域、6%が同20ミリシーベルトを超すおそれがある居住制限区域に指定されていた。政府は同日、人口54人の居住制限区域も避難指示準備区域に見直した。
避難指示解除どう思う 川内村の2人に聞く
2014年9月8日 朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/CMTW1409080700001.html
今年4月の田村市都路地区に続き、川内村東部の避難指示解除準備区域の避難指示が10月1日に解除される。渦中の人たちはどう受けとめているのか。村長の遠藤雄幸さん(59)と、行政区長の草野貴光さん(62)に聞いた。
●なぜ急ぐのか政府に不信感/草野貴光行政区長
政府の対応には不信が残りました。住民は解除の1年後に慰謝料(1人月10万円)の支払いが打ち切られます。地域の住民の生活がどうなるかが心配です。
ここでは皆、野菜を作って食べ、採った山菜を保存食にします。私は原発事故まで和牛を20頭ほど飼いながら森林組合に勤めていた。食費がさほどかからず、どの家も少ない生活費で暮らすことができました。しかし、野菜作りも山菜採りも国に禁じられています。私たちにとって慰謝料は以前にはない出費を賄う「生活費」なのです。しかも、地理的に買い物も病院も隣の富岡町や大熊町に頼っていました。村の中心部へは役場に行くぐらいで「川内へ行ってくる」と言うほどでした。
私は妻と母と5月から自宅で長期宿泊を続けていますが、小さな孫は来ません。夜に高熱を出せば1時間半かけて郡山市や田村市の病院へ行くしかなく、不安になるからです。
赤羽一嘉・経済産業副大臣(当時)は住民懇談会で「解除する側が言うのもおかしいが(解除されると慰謝料が打ち切られる)この仕組みはおかしい。賠償や生活支援は別途考えていかなければならない」と発言していました。安心して暮らせる支援策もないまま私たちを放り出すように、なぜ解除を急ぐのでしょうか。
富岡や大熊が復興するまでここの解除時期を延ばせば、傷んでいる家はさらに朽ち、戻る人がいなくなってしまうのもわかっています。戻りたいのか、避難先にいたいのか。多くの人は心の整理がまだついていません。せめて地域の集会所の補修が終わる12月1日まで解除を延ばして欲しいと求めましたが、政府には聞き入れられませんでした。
政府の責任者は懇談会で「川内が終われば次をどんどんやっていく」と発言していました。しかし、川内村と同じように強引に進められると警戒され、ほかの自治体での解除は進まなくなるのではないでしょうか。結果的に浜通りの復興が遅れ、ここの地域が立ちゆかなくなるのではないかと心配です。
●村の復興のためにも不可避/遠藤雄幸村長
対象区域には避難指示の解除に反対な人だけでなく解除を望む人もいます。とくに高齢者に残された貴重な時間を考えれば思いをかなえてあげたい。解除を受け入れた大きな理由です。
解除後に住民が一気に戻るかというと難しいでしょう。ただ、自宅にいつでも戻れるというのは気持ちの支えになるはず。仮設住宅などでの「仮」の生活が長く続けば気持ちはさらにすさんでしまう。解除区域には工業団地の建設も決まっています。村の復興のためにも解除は不可避でした。
行政区長から要望された「12月1日の解除」は政府に伝えましたが「寒くなり、引っ越しなどで物を動かすのは大変だ」という返答でした。解除時期が決まった住民懇談会で赤羽経産副大臣が「住民への生活支援の検討」に言及していました。それをあの場で言うのなら前もって住民に示して欲しかったですね。
政府は自然災害を例に、避難指示は憲法が定める「国民の権利」を上回る強制力だから出し続けられないと説明しました。筋論かもしれませんが、納得する住民がいたでしょうか。
自然災害と原発事故は違います。対象区域の山あいでは山菜を採る楽しみまで奪われた。不条理は解除後も続きます。住民が政府に反発するのは「なんとかしてくれ!」という心の叫びだと私は理解しています。
住民の思いと行政のやることには常にギャップがあります。村も昨年から暮らせるための準備を進めてきましたが、ギャップは埋めきれませんでした。
山あいでぽつりとなることに不安な人には、冬の間だけでも村の中心部で生活してもらうことを考えています。一人ひとりの要望を聞き、足りない部分をできる限り村がフォローしていくしかありません。
■キーマーク=川内村の避難指示 村は避難指示が出ている原発20キロ圏の(1)居住制限区域(18世帯54人)(2)避難指示解除準備区域(139世帯275人)と、30キロ圏の(3)旧緊急時避難準備区域(991世帯2417人)に大きくわかれる。政府が8月17日に開いた住民懇談会で(2)の避難指示解除方針と(1)から(2)への再編方針を決めた。(1)と(2)は第五、第七、第八と三つの行政区にまたがり、第八は109世帯223人と最も多い。解除に向けた長期宿泊は4月26日から実施されたが、実際に宿泊しているのは10世帯程度にとどまる。世帯数と人数は6月1日現在。
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