2014/09/09

放射能 生徒の本音は NGOと中学校がワークショップ/福島


 東京電力福島第一原発事故で降り注いだ放射能について福島の子どもたちに伝えようと、国際NGOと県内の中学校が連携してワークショップを開いている。意見が分かれる題材をあえて選び、話し合う。本人も気づかなかった本音を見つける機会になっている。

 NGOは「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」(SCJ)。いわき市立勿来第二中学校では6~7月の3日間、3年生対象のワークショップがあった。

 授業では毎回5人程度の班で話し合い、意見をカードに書く。「原発がまた爆発したら」「いつガンになるか」「外で遊ぶのと家にこもっているのはどっちが危ないか」。初日のカードには、生徒たちの率直な不安や疑問が並んだ。

 2日目は内部被曝(ひ・ばく)を取り上げた。題材は「給食 ぼくだけお弁当」という2011年の新聞記事。給食の安全性を心配する母親が子どもに弁当を持たせたところ、友達にはやし立てられた――という内容だ。

 「学校は産地や線量を知らせなかったのか」「はやし立てる友達も悪い」「一人一人の価値観が違う」。話し合い、カードに書き込む生徒たちに、講師を務めるNPO法人市民科学研究室(東京都)代表の上田昌文さんは「一つの答えがあるわけじゃない。いろいろ考えなきゃならないとわかるね」と呼びかけた。

 最終日は鼻血の描写や「福島はもう住めない」というセリフが問題になった漫画「美味しんぼ」をめぐり話し合った。

 ワークショップの意義を、上田さんは「時間をかけて丁寧に話し合えるかが鍵だ」と話す。「(子どもたちが何を考えているか)引き出さないとわからないし、親でも気づかない」

 SCJは昨秋から福島市といわき市の3中学でワークショップを開いた。当初は「やっと落ち着いてきたのに、寝た子を起こすことにならないか」と心配した教諭たちも、生徒たちが書いたカードを読んで協力的になったという。

 放射能について学ぶことは、自分を取り巻く地域や社会的な問題についても考えることになる。SCJ福島事務所の五十嵐和代さんは「知ったうえで、先を考える力、判断する力を育てたい。それには大人の支えも必要です」と話す。

 ワークショップ後にSCJは生徒にアンケートをした。「放射能について学ぶことは大切だと思うか」という質問には、82%が「思う」と回答。「同じことが起こらないとは限らないから」「これからの人生に関わってくるものだと思うから」という理由が並んだ。

 一方、「家族や友だちと放射能のことをもっと自由に話したいと思うか」という質問への答えは「思う」34%、「思わない」41%、「わからない」25%と割れた。

 「思わない」理由は、「思い出したくない」「話しても何も変わらない」「親が原発で働いていて話題にしづらい」など。「わからない」では「どう話していいかわからない」「周りがあまり関心がないから」という回答があった。

2014年9月9日 朝日新聞より

http://www.asahi.com/articles/CMTW1409080700002.html

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