2014/09/18

【福島の子供たち 健康リスクを考える(上)】 患者の不利益上回る利益あるか 甲状腺検査-過剰診断の指摘も


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 福島県県民健康調査検討委員会の委員でもある鈴木真一氏は、委員会の場では「過剰診療ではない」としただけで、詳細なデータを出すことはなかったにも関わらず、後日開かれた学会では、その内訳を発表しているとのこと。肺への転移を含む、他臓器への転移や、10ミリ以上の大きさのものということで、決して過剰診療ではないという内容だそうです。
 それにも関わらず、こうして過剰診療であるかのような見解を匂わせた記事を掲載していることを注視すべきだと考えます。また、検討委員会のさまざまな意見や環境省の住民の健康管理のあり方に関する専門家会議などで出された(行政により招集された者以外の)専門家の意見は、皆目無視された報道であることも意識してチェックしたいと思います。

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患者の不利益上回る利益あるか 
甲状腺検査-過剰診断の指摘も


東京電力福島第一原子力発電所事故による放射性物質の拡散は、福島に住む人たちに健康への不安を抱かせた。特に子供への健康影響が心配され、さまざまな対策がとられた。事故から3年半が過ぎ、対策の是非が問われている。福島の子供の健康をめぐる問題を考える。


 「娘の甲状腺に異常が見つかった」。兵庫県に住む男性(73)は福島県郡山市に住むめいからこんな手紙をもらいがくぜんとした。めいの娘は原発事故のとき、小学2年生。甲状腺の異常と聞いてまず思ったのは甲状腺がんだ。どの程度の異常なのか詳しく知りたかったが、手紙には「そっとしておいてほしい」と書き添えられ、自分から聞くわけにもいかない。
 男性は「郡山は原発から50キロ以上離れているから大丈夫と思っていたが、大丈夫じゃなかったのかもしれない。事故後すぐ、子供だけでも兵庫県に避難させるように言えばよかった」と悔やむ。
 この男性のように、福島に住む親類や知人の子供に「甲状腺の異常がある」と聞き、心配している人もいるのではないだろうか。チェルノブイリ原発事故後に明らかになった健康被害が、放射性ヨウ素の内部被曝(ひばく)による小児の甲状腺がんだった。このため、福島の事故で最も心配されたのが子供の甲状腺への影響だ。
 福島県は原発事故を踏まえ、子供たちの健康を長期に見守ることを目的に、事故当時18歳以下だった人を対象に平成23年10月から甲状腺検査を実施。「県民健康調査」検討委員会座長で、星総合病院(郡山市)の星北斗理事長は「事故後にどれぐらい内部被曝したか分からず、福島に住む人たちから子供の甲状腺がんを不安に思う声がたくさん寄せられた。検査はその不安になんとか応えようと始めたもの。検査をしたことで安心を得られた人も多い」と説明する。
 これまでに受診した約30万人のうち2次検査が必要と診断されたのは2237人で、2次検査の結果、甲状腺がんやその疑いと判定されたのは104人。福島県内の地域によって発生率に差がないことや、同様に検査を実施した他県の状況から、県は「被曝の影響は考えにくい」としており、甲状腺の専門家も多くが同様の考えだ。
2回目以降は?
 いわゆる「過剰診断」を指摘する声もある。がんの中には放置しても生涯悪さをしないものがあると考えられている。無症状の子供を調べる福島では、こうしたがんまで見つけているのではないかというのだ。
 甲状腺がんの治療は手術が基本で、手術すれば比較的予後(治療後の経過)が良く、生命にかかわることはまれとされる。ただ、手術で甲状腺を全摘すると、生涯にわたり甲状腺ホルモン剤を飲まなければいけない。手術は本当に必要なのか。放っておいた方がいいのではないか。がんと診断された患者や家族は、さまざまな不安を抱えることになる。
 もちろん、早期にがんが診断されることで救われている命もあるだろう。星理事長は「がんが見つかった人にはていねいに説明し、納得した治療法を選択できるようサポートしてきた。さまざまな意見はあるが、がんを早く見つけて健康被害が広がらないようにするという考えは多くの県民に受け入れられている」。
 検査は平成28年4月以降は20歳までは2年ごと、それ以降は5年ごとに継続して実施するとしている。2回目以降の検査を子供に受けさせるべきか、保護者には悩ましい問題だ。
 大阪大学大学院医学系研究科の祖父江友孝教授(環境医学)は言う。「何らかの所見があって不安な人が検査を受けるのはいい。しかし、健康な人が受けるとどうしても過剰診療の問題が出てしまう。これまでの結果をきちんと検討し、検査を行うことに患者の不利益を上回る利益があるのか考える必要がある」


http://sankei.jp.msn.com/life/news/140911/bdy14091111450003-n1.htm

2014年9月11日 産経新聞





首にゼリーを塗って行う甲状腺の超音波検査。原発事故後、子供の健康への放射線による影響を心配した保護者を対象に、相談外来を実施した小児科医院もあった (提供写真)

首にゼリーを塗って行う甲状腺の超音波検査。原発事故後、子供の健康への放射線による影響を心配した保護者を対象に、相談外来を実施した小児科医院もあった (提供写真)









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