2014/09/04

チェルノブイリの負の遺産を背負うドイツの野生イノシシの現状

チェルノブイリ事故の影響による野生動物の汚染は、28年たった今も依然として解消されていないのです。日本の汚染はまだ始まったばかりです……

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1986年に発生したチェルノブイリ原子力発電所事故では、爆発によって飛散した放射性物質が近隣諸国はもとより全世界規模で被害を及ぼしました。近年ドイツで行われた調査からも、事故が原因とみられる放射能の影響が残されていることが明らかになっています。

Radioactive wild boar roaming the forests of Germany - Telegraph
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/europe/germany/11068298/Radioactive-wild-boar-roaming-the-forests-of-Germany.html

ドイツ・ザクセン州政府が実施した調査した結果からは、地域に生息している野生イノシシの3分の1は体内に放射性物質が蓄積されており、人間の消費には適さないレベルにまで達していることが明らかになっています。イノシシの出没によって高速道路が閉鎖されたり、車いすに乗った女性がイノシシに襲われる事件が発生するなど、人間社会にとってイノシシの存在は脅威の1つとなっていますが、今回明らかになった放射能の影響はまた別の次元での脅威となりそうです。

原子炉内の燃料が炉心溶融を起こした後に爆発するという史上最悪の原子力事故になったチェルノブイリ原子力発電所事故では、爆発によって飛散した放射性物質が周辺の地域に深刻な放射能汚染をもたらしました。その影響は甚大で、事故から約30年が経過しても汚染の状況はいっこうに改善されず、2006年の段階でもチェルノブイリは「世界でもっとも汚染された10の都市」の1つにあげられています。影響はさらにヨーロッパの広い地域にも広がっており、フランスなどでも土壌汚染が確認されているほか、チェルノブイリから遠く1000km以上離れたドイツに住む野生のイノシシの体にも多くの放射性物質が蓄積されていることが明らかになっているのですが、これもチェルノブイリの影響の1つであると考えられています。

野生のイノシシは地面を掘り返して地中に埋まっているキノコなどを食糧にしているため、地表の汚染の影響を顕著に受けると考えられています。2012年には、野生のイノシシを捕獲した場合には放射線検査を受けることが義務化されており、1kgあたり600ベクレルの安全基準を超えた場合は廃棄して処分することが必要となっています。1年間で752頭がこの検査を受けたところ、実に約4割にあたる297頭が基準を超えていたことがわかっており、なかには基準値を10倍以上も上回る個体があったことも確認されているとのこと。

狩猟されたイノシシの肉は食品として販売されていたこともあり、これによって経済的ダメージを受ける例も発生しています。捕獲したイノシシを廃棄することになった場合には政府から一定の額が補填されるのですが、ザクセン州ハンター協会の会長を務めるシュテフェン・リヒター氏によると「狩猟にかかった費用はカバーできるが、売上からの利益はなくなってしまう」と被害の状況を語っています。

なお、この問題の解決には非常に長い時間がかかることが予想されています。汚染ルートは土壌の汚染を含む食物連鎖に密接に関わっているため、汚染が取り除かれるまでには50年単位の長い戦いになることが予想されています。

http://gigazine.net/news/20140902-chernobyl-radioactive-wild-boar/

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