2014/09/25

遊び場づくり-室内から屋外へ 生活習慣取り戻す仕掛けを

この連載のまとめが「屋内施設」から「屋外施設」への転換という方向であるところが、非常に危惧されます。これを読んだ人たちが、復興庁が出している屋外施設の整備に両手を挙げて賛同することがないことを願います。

もちろん、子どもたちに屋外遊びが大事なことは誰に指摘されなくても、親たちは痛いほど知っています。どうしてそれができないのか、放射線被ばくを少しでも減らしたいから。安全な遊びの環境、それを保障するのは大人の役目。

「『もう室内に遊び場をつくる時期ではない。一度身についた習慣を変えるには時間がかかるが、子供は外で遊ぶのが本分。外で遊びたくなる仕掛けをしていく必要がある』と提言する。」必要なのは仕掛けじゃない。事故前と同じ、ただただ安全な環境なのです。除染の基準を上げてしまうようなことではないのです。



【福島の子供たち 健康リスクを考える】
(下)遊び場づくり-室内から屋外へ 生活習慣取り戻す仕掛けを


室内遊具を使った遊びに興じる子供たち。「飛ぶ」「よじ登る」「ぶら下がる」など運動能力を伸ばす工夫が凝らされている=福島県郡山市のペップキッズこおりやま
室内遊具を使った遊びに興じる子供たち。「飛ぶ」「よじ登る」「ぶら下がる」など運動能力を伸ばす工夫が凝らされている=福島県郡山市のペップキッズこおりやま
 東京電力福島第1原子力発電所事故がもたらした放射能への不安は、子供たちの生活から外遊びが減る変化を引き起こした。肥満や体力低下による生活習慣病のリスクも懸念される中、不安を解消し、普段の生活を取り戻すための取り組みが続いている。
「異常なし」を対象
 「子供をプールに入れていいのか」「公園は安全か」「畑の野菜は大丈夫か」
 原発事故以降、放射線の影響を懸念する声が、メディアやインターネットを通じて大量に流れた。各自治体はプールの水質検査や公園の除染、自家消費野菜の放射能測定器を設置、その結果を公表することで、不安の解消をはかる。
 しかし、行政への信頼感や放射能への受け止め方はそれぞれ異なり、「気にしすぎるより、子供は元気に外で遊んだほうが健康にいい」と考える家庭でも、震災前と比べて子供の外遊びは減っているようだ。
 「私は大丈夫と思っても、子供の友達の親がどう考えるか分からない。それを推し量るとストレスになるので、自然と友達を誘わなくなる」。5歳と2歳の母親(42)は話す。
 一人一人の親の不安解消に努めるのが、福島県郡山市の小児科医、菊池信太郎さん(44)だ。
 例えば、菊池さんが院長を務める小児科医院では平成23年12月から、甲状腺に不安を抱く人を対象に週1回、専門医を招いて専門外来を開設。県の甲状腺検査で子供がA2判定(異常なし)を受け、2次検査の対象外になった保護者の相談にも応じてきた。
 A2とは「5ミリ以下の結節(しこり)または2センチ以下の嚢胞(のうほう)(水の袋)」で心配はない。最近は少なくなったが、開設後2年で約150人が訪れたという。
 「画像を示しながら丁寧に時間をかけて説明すると、多くの人が納得し安心する。不安を放置したら子供にも伝わる。保護者の安心が何より大事です」
外遊びが本分
 菊池さんが心配するのは、むしろゲームや漫画が遊びの中心になり、運動不足とストレスをためがちな子供たちの心身だ。
 東日本大震災直後から、子供たちのPTSD(心的外傷後ストレス障害)を懸念。同市で長期的に子供や保護者の心身をケアする「震災後子どものケアプロジェクト」の立ち上げに尽力し、23年12月には市営の巨大室内遊び場「ペップキッズこおりやま」(無料)の開設にこぎ着けた。
 走る▽飛ぶ▽ぶら下がる▽よじ登る-など、子供の成長に必要な動きを効果的に取り入れた遊び場は市内外の親子に好評で、開設から10カ月で30万人が訪れた。一方、除染した後も公園で遊ぶ子供が少ないことには複雑な思いを抱く。
 「ペップキッズの開設は外が危険だからではなく、子供の運動能力の発達に役立つ施設だから。『外遊びは危ない』と受け止められるのは本意ではない」と菊池さん。
 プロジェクトのメンバーが現在、力を入れるのは屋外遊び場の整備と外で遊ばせるための仕掛けだ。
 屋外で遊ばない習慣がつくと外遊びの方法も分からず、ますます公園から足が遠のく。季節による空気の変化、風や雲の動き、陽光の暖かさなどは室内遊び場では感じにくい。室内遊び場では異なる世代の人と接する機会が少なく、社会性を育む場になりにくいなど学べないことは多い。
 菊池さんは「もう室内に遊び場をつくる時期ではない。一度身についた習慣を変えるには時間がかかるが、子供は外で遊ぶのが本分。外で遊びたくなる仕掛けをしていく必要がある」と提言する。(平沢裕子、村島有紀が担当しました)
産経新聞 2014.9.15 


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