2014/09/20

日本学術会議提言「復興に向けた長期的な放射能対策のために」

日本学術会議のHPによれば、東日本大震災復興支援委員会の放射能対策分科会より、昨日、以下のような提言が含まれる「復興に向けた長期的な放射能対策のためにー学術専門家を交えた省庁横断的な放射能対策の必要性ー」を公表しています。先ほどアップしたニュースは、こちらの提言を受けて発表されたものと思われます。

環境省の専門家会議でも、日本医師会の石川委員および学術会議の春日委員は、このような提言を汲んだ発言を時折されています。次回の専門家会議は、22日(月)17時〜。傍聴の申込みはすでに終わっていますが、当日、OurPlanetTV等の中継もありますので、ぜひ注目していきましょう。

























http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-t140919.pdf


以下、「提言」部分を抜粋。


本分科会では、前提言以降の放射能対策に関わる政府内のモニタリング、対策意思決定システムの改革、並びに現地対応の進捗に鑑み、行政と学術との適切な関係性構築並びに、必要な新たな地域支援に関して以下の5つの提言を追加する。

(1) 府省横断的な研究体制と原子力規制行政支援に対応する新たな学術的枠組み

提言1: 学術専門家が参画する長期的で府省横断的な放射能調査・研究体制の必要性 

原発事故に起因する放射性物質の幅広いモニタリングと移行の予測を行い、さらに、その結果に基づいてヒトの健康への影響や生活環境への影響をより正確に予測するためには、放射線、炉内事象、環境動態等に関する学際的かつ総合的な解析が必要である。このため、政府は、今後国の中枢に、学術専門家が参画した府省横断的学術調査・研究企画調整体制を整備し、適切な情報を効果的に政策決定に反映させる制度を構築すべきである。現状では、これは原子力規制委員会の下に置かれることが望ましい。

提言2: 原子力規制委員会に対する科学者コミュニティの貢献の必要性 

提言1で述べた総合的知見を原子力規制委員会による中長期的な放射能対策に係る決定に多様な分野から支援を行うために、科学者コミュニティは、協働して科学的知見と助言を原子力規制委員会に提供する仕組みを直ちに確立すべきである。また、原子力規制行政に対する国民の信頼を再構築するためには、科学者コミュニティが、これら行政の活動を第三者として自主的かつ客観的に評価することも重要である。

提言3: 初期被ばくの実態についての学術的解明の必要性

初期被ばくの影響については、事故初期の放射性物質の放出や拡散の情報が十分に公開・共有されていないために、適切に解明されているとは言い難い。一刻も早く、初期被ばくの実態を把握する必要がある。そのために、政府関係機関並びに全ての学術組織は、保有するものの中で原発事故とその影響の解明に役立つ可能性のある情報を、ただちに公開すべきである。また、それら新たな情報や、炉内事象、放射性物質の物理的・化学的性状等に関する知見を基に、大気中放射性物質濃度の再現シミュレーションの高度化を図るなど、初期被ばくの実態を明らかにする研究の充実が必要である。また、政府・自治体はこれらの研究結果を必要な政策決定に反映すべきである。

(2) 地域支援に向けた科学者の役割

提言4: 健康管理に関わる調査の継続と多様な配慮の必要性

現在福島県は、甲状腺超音波検査・血液検査・心の健康調査を含む健康調査を実施しているが、これらの検査は長期間にわたって実施される必要があるため、引き続き放射線による健康への影響の発現を監視する健康調査を継続すべきである。同時に、科学者コミュニティは、健康を総合的に理解し保護するための考え方、健康調査体制のあり方、健康調査結果の伝え方等について、住民との十分な対話を踏まえつつ、不断の改善を図るよう、全力を尽くすべきである。万一、心身の健康異常を発見した場合は、国や県は充実した医療を提供すべきである。
また、福島県の健康調査で発見された甲状腺がんについては、有病率の適切な解釈と最適な治療に向けて努力しなければならない。さらに、現在限定的に行われている健康調査の対象地域の妥当性については、国は初期被ばくに関する新たな知見を踏まえ再検討すべきであり、科学者コミュニティはこれらの活動を支援しなければならない。

提言5: 地域復興支援に関する学術的活動の強化

科学者コミュニティは、政府が示した基本的考え方の具体的な運用にあたって、住民帰還の判断や除染の目標値に関する、地域の決定ならびに住民それぞれの選択を支援する必要がある。また科学者コミュニティは、除染の適正化、費用と効果、効果的な除染技術への科学的な裏付け、除染作業者の健康管理についても、政府の適切な政策を導くための助言を行う必要がある。これらの学術的活動を通じて、除染土壌・除染廃棄物の仮置き、中間貯蔵、最終処分の立地を巡る課題、帰還後あるいは長期避難先または移住先での生活再建の選択といった、地域支援に係る課題に適切な対処がなされるよう努めなければならない。

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