2013/08/22

【レポート】地域放射線量マップをつくろう! 〜はかる、知る。「放射線見える化プロジェクト」白井市〜

2013年8月16日、白井 子どもの放射線問題を考える会(千葉県、HPはこちら)の協力で、ホットスポットファインダーでの測定を行いました。これは、前述のこどもみらい測定所の「見える化」プロジェクトと連携し、子どもたちの身近な地域の放射線マップを作成する取り組みを進める第1回としてパイロット的に行ったのですが、実際に測定してみて、ホットスポットファインダーの威力がよくわかりました。以下、詳細レポートをお届けします。


この日、千葉ニュータウン中央駅に集合したのは、白井の会のみなさん5人、こどもみらい測定所の前田さんと、子ども全国ネットからは私、伊藤。途中だけ見学に加わってくれた方もいらっしゃいましたが、常時7人という、比較的大所帯の測定チームです。

さて、ホットスポットファインダーは、1秒ごとに測定データを機器内に記録していくため、移動スピードによって、マッピングは粗くなったり、密になったりします。そこで、詳細に測りたいところは、徒歩なり自転車で移動しながら測定し、大まかでいいけれど、広範なデータがほしいところは車で移動する、という具合に使い分けることになります。

今回は、車2台にそれぞれ自転車を積んで移動するという理想的な体制で臨むことができました。ただし、車で測定した数値は、車体によって放射線が遮蔽されてしまうため、約1/3ほどを加算して比較しなければいけません。下記に出てくるマップはすべて、車での移動と、徒歩や自転車での移動が混ざっていますので、それぞれ留意してご覧ください。

集まってくださったみなさんと打合せ。


連日の暑い中、しかも日中の測定でしたが、白井の会のしばたさんをはじめ、お母さんやお父さんなど、とても熱心に参加してくださいました。暑さ対策、水分補給に留意しつつの測定でした。



まずは、しばたさんが用意してくださった地図で、きょう1日の測定予定を大まかに打合せ。測定したいポイントを、あらかじめ、いくつか決めてもらっていました。やはり「高い」と言われている気になる地域から測定することにして、そこは自転車や徒歩で測定し、間は車で移動しながら測定することになりました。



ホットスポットファインダーを準備する前田さん。

測定器はソフトケース(黒いのがそうです)ごと
肩から斜めがけにしています。
メジャーで1mを確認。
自転車での測定の際は、タブレット端末(iPadなど)は、前カゴだと不安なのでナップザックに入れて背中に背負うようにします。そして、測定器部分が、地上から1mになるように調整することで、測定条件をそろえます。これで準備完了!

最初の測定は、会の方々のこれまでの測定で、放射線量が高そうだと判明している桜台地区。集合した駅からほど近い、比較的高層のマンションや団地が並び、周囲には戸建て住宅が並んでいる、明るいきれいな住宅地です。

自転車2台に2人がまたがり、残りの人は車で移動。併走したり、駐車場や路肩で先回りして待つなどしながら測定します。ホットスポットファインダーは、1秒ごとに自動的に測定しているので、スピードがあがれば粗くなり、ゆっくり移動すれば密なマッピングになります。気になるところは、車を降りて、自転車で移動します。(徒歩で長時間移動するには暑すぎる日でした…)

桜台をまわった時のタブロイド端末の画面表示。
青いのはすべて測定数値です。(1秒ごと)

自転車で測定したデータをgoogle earthで見ると、こんな感じにマッピングされているわけです。【車、自転車】
ここに表示されている範囲は自転車および車で移動しています。5秒ごとを指定しマッピングしたものです。

測定は1秒ごとに自動で行われていて、それをこちらで、5秒ごととか、10秒ごとと指定して、地図上に落とします。5秒間なら5秒間の平均値、10秒なら10秒の平均値が表示されますから、長い時間にしたほうが正確な測定値に近づきます。ただし、マッピングは密度が粗くなるわけです。マッピングの密度は、移動のスピードにもよりますが、何秒ごとにマッピングするかという指定にもよります。

う〜ん、全体に0.1を超えていますね。このホットスポットファインダーは、シンチレーション式の測定器で、一般に私たちが持っているガイガーカウンターや10万円台のシンチレーション式カウンターよりも、正確な分、若干低めの数値が出るというお話ですが、それでもこのデータです……。

上のマップの自転車での測定のみをピックアップ、真上からみた形に見やすく加工したものかこちら。(拡大して見れるようにできるといいのですが…あとで挑戦します…)【自転車】



周囲の測定のあと、駐車場で落ち合って、駐車場の隅の土の部分を測定してみました。

ホットスポットファインダーの設定する前田さん。
充電をもたせようと画面を暗くするなど工夫して対応。
              





みなさん持参の測定器を並べて、比較してみました。Mrガンマ、HORIBA Radiでは、0.15μSv/h前後。Dose RAE2で0.11μSv/h前後でした。









ホットスポットファインダーでは0.12μSv/h。
(この時、電池の消耗を減らすために、右側の画面に表示されるマップを作動させていなかったため、東京駅が表示されていますが、これは、上記と同じ、桜台にある駐車場で測定したものです)





ちなみに、駐車場の入り口付近。直置きだと
Mrガンマで0.4μSv/h前後でした!

ちょっと高めの数値が気になったので、土壌も合わせて測定しようということになり、急遽、しばたさんが自宅から土壌採取セットを持参。深さが均一になるように注意しながら1Lをめやすに採取しました。




続いて、運動公園に移動。車中でもホットスポットファインダーは測定を続けています。到着後、車から自転車を降ろし、グランドと建物の周りのコースを自転車で周回して測定しました。

広々として設備の整った運動公園。この日は暑さのためか、
陸上競技場で練習中の高校生と思われる姿があった以外、
公園に子どもたちの姿はありませんでした。


だいたい0.10〜0.14μSv/hという数値でした。0.15μSv/hを超える地点が何カ所もあった桜台に比べると低いですが、何しろ、走るなどの運動をする施設なわけですから、グランドなど施設の中は、できるだけ低めの数値であってほしいなと思いました。【自転車】







この辺でお昼になってしまい、市役所へ向かいました。機器の充電と昼食休憩をとり、午後の測定へ向かいました。市役所の担当者の方にお世話になり(ありがとうございました。)、汚染土の保管倉庫も見学。ちょっと入り口を入った地点で測定してみましたが、数値は高くなかったですね。0.079μSv/h…土砂が舞って吸入したりしない限りは、入り口地点での作業は心配ないかもしれません、担当者のみなさま。




いざ、午後の測定へ。こんな感じで、2台の自転車を交代で乗りながら測定しました。



次は、白井駅の駅前広場のけやきの木周辺が気になるというので、そちらへ移動して測定しました。これがその時のデータですが、自転車や徒歩で測定した駅前広場の空間線量は他と比べたら、特には高くないという結果でした。【自転車】




気になったというけやきの木の根元を測定してみると、直置きで0.31μSv/h。(HORIBA Radi)やはり、この根元の土は放射能値が高そうです。



ホットスポットファインダーでも測定。
地上5cmで0.182μSv/sです。



なので、どうやら、ここに直に座ったり、この土で遊んだり、強風の日の舞い上がる埃を別にすれば、通り過ぎる分にはあまり問題はなさそうです。でも、駅前でたくさんの人が行き交う場所なので、ここの土だけ入れ替えるなどの対応ができればもっといいですね。

こうして何カ所か測定しながら、間は車での移動でしたが、車内で測定しつつ、タブレット端末をのぞいている前田さんが、「他は、とくに高くないかなぁ」とつぶやきます。そうなんです、雑木林があったり、梨畑があったりする在来の宅地周辺は、それほど数値があがりません。もちろん、車体による遮蔽分の3割を勘案したとしても、です。そして、住宅地よりも、畑、それよりも田んぼの数値が低かったそうです。


西白井駅周辺へと移動して、最後に学校周辺や保育園なども立ち寄りました。これがその全体図です。【自転車&徒歩】
西白井駅の周辺と貯水池広場を測定。このマップ上はすべて自転車での移動です。(桜台、運動公園と比べると低いことがわかります)

高い数値が出ているという、貯水池のとなりにある広場を重点的に測定しました。大雨の際は貯水池になる半分の部分は、ふだんは草っぱらになっていて自由に遊べるのだそうです。でも、先日、高い放射線値が測定されて注意喚起されていると聞いて現地へ向かいました。

入り口に張られていたらしい、立ち入り禁止テープが
片側に巻き付いているだけで、普通に入れました。
こんなふうに周囲より数m低くなっている上、大雨の時には
雨を貯める場所…「当然数値は高そうだよね」と
草っ原をくまなく歩いて測定する前田さん。
こんなふうに、ジグザグに歩いたとおりに測定値が地図上に入っていきます。この青字の1つ1つが測定値。

この時の測定をマップに落としてみると…北側の池の近くが0.21〜0.25μSv/hと、とくに高いです。地上1mでの測定と思うと、全体にも高い数値ですし、子どもたちが遊ぶ場所にはしてほしくないなと私は感じました。周囲の道路は明らかに数値が低いですが、それがこの地域全体の感じなので、窪地だけ高いことがよくわかります。【自転車&徒歩】




さて、この日の測定の全体図は、下の通りです。測定箇所と測定箇所のあいだの移動は車でしたので、遮蔽されている分が数値が小さいとはいえ、在来の住宅地や畑地、雑木などがある地域が意外に数値が低いこと、そして、貯水池をのぞけば、この日数値が高かったのは、運動公園、そして、開けた住宅地である桜台だったことに、参加者みんな驚きました。

原因はなんでしょう。汚染の濃度に差があり、高い数値の地域があって、桜台や運動公園がその地域に含まれているためだったり、2011年3月にプルームが飛んできた際に、高層住宅の壁にあたって放射性物質が落ちたり付着したりしたのかしら…等々、車中で話しました。いったん汚染されると、除染しようにも、土や木をどけるというのとはわけがちがって(いえ、土や木をどけるのも難しいのですが)、コンクリートやアスファルトを除染するのは困難です。

団地やマンションなど、たくさんの子どものいる世帯が住んでいる地域です。まず、各家庭で家の中の線量も測定してみてほしいなと思います。長時間過ごす家の中がまず線量が低いことが重要です。学校等は除染して、コンクリートで遮蔽され、実際立ち寄った際も数値は高くはなかったのですが、自宅は、それぞれ条件もちがい、風向きやふだんの生活スタイルでも、汚染状況はちがっているはずですから、測定してみる以外ありません。次にいつも通る通学路、公園などをはじめ、家、学校以外で、よく行ったり通ったりする場所の線量を確認してほしいです。そして、もし線量が高かったら、ふだんの過ごし方には十分注意してほしいと感じました。 【注:このマップは、車、自転車、徒歩が混在しています】




こうして1日、ホットスポットファインダーを使って測定をしながら、ホットスポットファインダーのすごさを感じました。今までなら、いちいち立ち止まって数分、測定しては数値をメモし、地図に測定地点を書き込み、あとから膨大な作業をしてはじめて、このようなマップを作成できたわけですから、測定するだけでマップが作れてしまうホットスポットファインダーの威力はすごい!  

あとは、自転車や徒歩で測定したところと、遮蔽分を考慮すべき車で移動しながら測定したところが見てすぐわかる形になればすばらしいと思います。同じマップ上に、両方が混在している場合、あとから手作業でもわかるようにしてから公表しないと、誤解を生じてしまいます。

※ この件、確認しました。現在の最新機器では、あらかじめ2割遮蔽、3割遮蔽という条件を入力しておけば、その分、実測値に上乗せしたデータを表示できる機能があるのだそうです。ただし、遮蔽については、一概に何割と言えないので(車によっても異なるし、ホットスポットファインダーの位置によっても異なるため)、「
現在のソフトウェアでは移動速度が記録されていませんが、GPSでの測位時には速度もデータとして得られます。それを補助情報として記録できるようにメーカーに改善要望だします。現状では線量表示ポイントの間隔で判断するしかないと思います。」と前田さんから返答をいただきました。

この機器を使って、市民が必要な場所、気になる場所をくまなく測定し、その数値がいつも公開されていて、気になる箇所をいつでも調べることができたら、子どもたちをよけいな被ばくから守るために必要な状況に一歩近づけるのではと思いました。

子ども全国ネットでは、これを機に、各地の会と連携しながら、ホットスポットファインダーを持っている市民測定所の協力で、マップづくりにも取り組みたいと話しています。

白井市のみなさん、こどもみらい測定所の前田さん、ありがとうございました。


こどもみらい測定所
http://memoli4future.com/kodomira/

放射線見える化プロジェクト(プロジェクトへのカンパは随時受付中!)
http://memoli4future.com/kodomira/HSF/entry-10439.html





3 件のコメント:

  1. 拝見しました。
    白井駅南口のケヤキ根の数値を「ホリバの測定器の数値」と比較すると、HPファインダーの測定値が低いように見受けられます。
    しかし、広範囲の測定には「省力と即時性」では優れものだと思われます。今後、多くのデータの比較(作業による空間線量測定との)などで精度が高められるとよいのではないでしょうか。
    白井・山本

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  2. 山本さま、コメントありがとうございます。
    測定を担当してくださった前田さんには、10万円台のシンチレーションカウンターより、50万円台のアロカなどの数値に近く、若干低めに出ると聞いた気がします。また、あの時の測定位置が、もしかすると若干ホットスポットファインダーのほうが地面から離れていたかもしれない、と写真をみて思いました。今、前田さんに確認中ですので、確認とれ次第、お返事いたします。

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  3. 山本さま、HORIBAのRadiよりは、アロカなどの数値に近いこと(若干、低めに出る)、また、写真と説明を加えたことで見ていただけたかと思いますが、HORIBAは直置きしていますが、ホットスポットファインダーは、地上5cmの値です。そのために数字がちがっていると思われます。

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