2014/07/11

リスクと恩恵 〜小児歯科のX線写真を拒む親が増えていることについて〜


http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/column/20140711000206

四国新聞社記事より


 つい先日、小児歯科が専門の大学教授から、こんな話を聞かされた。

 「歯科にとってエックス線写真から得られる情報はとても貴重。ところが、最近はわが子の撮影を拒む親が多い。放射線被ばくに過敏になっているのだろうが、正確な診断や治療の妨げになる。困った問題です」。

 東京電力福島第1原発事故の心理的な影響もあるのかもしれないが、なぜそこまで過敏になるのか、教授には分からないという。

 歯の中に隠れている虫歯や神経が通る根管の状態、歯周病の進行で溶けてしまった歯槽骨など、歯科エックス線写真がもたらす情報は豊富かつ有益だ。

 では、撮影に伴う被ばく線量はどれほどだろう? 口の中にフィルムを入れ、外からエックス線を照射して歯や周囲の組織を撮影する口内法なら1枚につき0・01ミリシーベルト。上下の顎の骨全体を写せるパノラマ撮影でも0・03ミリシーベルト。

 東京―ニューヨーク間を旅客機で1往復した場合の宇宙線による被ばく線量0・2ミリシーベルトや、胸部エックス線撮影の0・05ミリシーベルトと比べても、かなり少ない。

 もちろん、わずかであってもリスクはゼロではない。しかし、正しい診断が行われない場合のリスクも考えるべきだ。医療に限らず、何事にもリスクとベネフィット(恩恵)の両面がある。要は恩恵がリスクを上回るかどうかなのだが。

 ワクチンやステロイドなどの薬剤をめぐる議論でも、この国ではリスクに恩恵が覆い隠されてしまいがち。両者を冷静に評価する姿勢が必要だ。



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福島第一原子力発電所事故による被ばくのリスクを抱えてしまった以上、それ以上の被ばくを回避したい気持ちは、子どもを思う親にすれば、当然でしょう。そこで、リスクと恩恵をてんびんにかけて、判断するしかないということはわかります。これまで日本では、ほとんど被ばくのリスク説明などないままに、X線、CTなど医療被曝を伴う検査が行われてきました。結果、諸外国よりも相当の医療被曝をしているという話も出ています。
これを機に、医療被曝のリスクとメリットを、ていねいにインフォームドコンセントしていくことが当たり前になれば、日本の医療も一歩前進するのではないかと思います。もちろん、むやみに被曝にさらさない、という信頼が前提になると思います。  

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