2016/10/31

「福島のすべての子どもに謝って」 原発避難者の女性/群馬

2016年10月31日 朝日新聞デジタル
http://digital.asahi.com/articles/ASJBY0GCFJBXUHNB01R.html?rm=387

東京電力福島第一原発事故で群馬県内への避難者ら137人が、国と東電に1人あたり1100万円の損害賠償を求めた集団訴訟が31日午後、前橋地裁で結審した。判決は来年3月17日に言い渡される予定。「原発事故全国弁護団連絡会」の代表世話人・米倉勉弁護士によると、各地の同様の集団訴訟で最も早い判決となりそうだ。提訴から3年。ふるさとから避難せざるをえなかった苦しみを訴えてきた。

「福島のすべての子どもに、東電は謝ってほしい」。群馬県渋川市の保険会社員の女性(44)は、そんな思いで訴訟に加わり、証言台にも立った。

事故当時は次女を妊娠中だった。小学3年の長女と4歳の長男を連れて、福島県いわき市から自主的に渋川市の避難所に避難。その後、市営住宅に入居した。事故まで夫婦で経営していた土建会社は仕事や従業員が減り、たたんだ。夫とは、避難をめぐる意見の食い違いもあり、離婚した。

長女は転校先の小学校になじめなかった。同級生はほとんどが幼なじみで、転校生は珍しい。方言も違う。避難してから半年ほどの頃、集団下校で離れて歩く姿を見つけた。毎日のように長女が「学校が楽しい」と話していたのはうそだったと気がついた。

同じ頃に受けた甲状腺検診で、長女にいくつかの嚢胞(のうほう)が見つかった。「必ずしも害があるわけではない」と医師から説明を受けたが、健康への不安がぬぐえない。

長女が中学校に入学する前に、いわき市に戻ろうとも考えた。しかし、市内の民間借り上げ住宅や公営住宅への入居希望は通らず、民間の家族用アパートも空きがなく、あきらめた。

現在、長女は中学2年、長男は小学4年、次女は4歳になった。女性は、保険の外交員をして3人の子どもを育てている。月収は手取り10万円弱。別れた夫から養育費はもらえていないという。

福島県は、避難指示を受けていない自主避難者への住宅の無償提供を、来年3月で打ち切る方針を示している。そうなれば今住む市営住宅にとどまるための再審査が必要だ。通っても敷金に加え、月に3万円程度の家賃負担が重くのしかかる。女性は「夜間に働けるコンビニのアルバイトなどを探そうかな」と話す。

仕事や住まい、家族も変わり、平穏な毎日が奪われた。「子どもたちも、どれだけの苦痛を受けてきたか。裁判長にはなんとか分かって欲しい」(篠原あゆみ)
保険会社の営業所で外交員として働く女性
=群馬県渋川市、篠原あゆみ撮影



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