2016/10/22

[検証]ため池除染 縦割り…郡山/福島

2016年10月22日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/local/fukushima/news/20161021-OYTNT50106.html

◆環境省 岸から20メートル/農水省 残り中心部/両省が協議

郡山市の住宅地近くのため池除染で、環境省が市に対し、「岸から20メートルしかやらない」と通告し、同じ池なのに20メートルより遠い中央部は農林水産省の汚泥除去事業として除染を行う方向で協議が進んでいることが両省などへの取材でわかった。一つの池の除染を二つの官庁で分担する方法が浮上する背景には、それぞれの縄張りと理屈を重視した「縦割り」の構造がある。(稲村雄輝)

県農地管理課や同市などによると、問題のため池は郡山市内に複数ある。環境省は市側との今年夏までの協議で、「岸から20メートルの範囲しか除染対象にならない」と通告してきたという。同市農地課の担当者は「ため池の放射性物質対策は本来、東京電力福島第一原発事故で中断した農家の営農再開支援が目的のはず。環境省の管轄になると池の真ん中は除外されるのはおかしい」と話す。

ため池での除染は、人の生活圏に近く、水が干上がった時に放射線量が大幅に高くなる危険性があれば環境省、それ以外は農水省が管轄する線引きになっている。国の予算を使って市町村が実施する基本的な仕組みは同じだが、両省が掲げる事業の目的は違う。 環境省の除染は主な目的を「人の健康への影響を防ぐ」ことと位置づけており、影響がなさそうなところは範囲外にしている。住宅地近くの森林除染でも、一定の距離があれば放射線が届かなくなるとして「20メートルまで」を原則にしており、「ため池にもこの考え方を当てはめることにした」(環境省)という。

農水省は、ため池の水を使って育てた農産物の風評被害抑制を目的に汚泥の除去や流出防止措置を実施しており、作業範囲は限定していない。このため、郡山市のケースでは、岸から20メートルまでは環境省の予算で、それより遠くの中心部は農水省が扱う形に落ち着く見通しで、両省などが調整している。

県農地管理課の担当者は「今後、生活圏近くのため池の中には、郡山でのやり方をモデルに除染の枠組みを決める例が出る可能性がある」と話すが、同じ池の除染をなぜ二つの官庁で分け合わなければいけないのか、という根本的な疑問が解消される気配はない。
除染が検討されているため池(郡山市で)

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