2015/05/23

「原発避難の苦しみ、本質は地域の分断」 映画監督の舩橋さん講演

2015年5月23日 埼玉新聞
http://www.saitama-np.co.jp/news/2015/05/23/09.html
震災後、加須市の旧騎西高校に避難した福島県双葉町民のドキュメンタリー映画を製作した、映画監督の舩橋淳さん(40)が22日、さいたま市内で講演した。双葉町民の姿を映画化しようとした経緯や避難者をめぐる矛盾について語った。

舩橋さんは、震災直後から埼玉県内に避難した双葉町民を取材。避難者の実態を描いたドキュメンタリー映画「フタバから遠く離れて」を国内外で公開している。講演は新聞労連関東地連の常任委員会で、「現在進行形の災害と向き合うために」をテーマに行われた。

講演で舩橋さんは双葉町に興味を持ったきっかけを説明。福島第1原発の事故直後、海外の情報に比べ、政府が放射性物質による健康被害を軽視する中、唯一、県外避難を決めた双葉町に注目したという。舩橋さんは「国内外の情報格差にフラストレーションを感じていた。唯一県外避難を決めた双葉町の選択が正しいように思え、興味を覚えた」と述べた。

舩橋さんは、避難者の不満を誘導尋問するかのような取材方法に疑問を持ち、カメラを持たず、喫煙所でのおしゃべりなどを通じて町民と人間関係を築いたエピソードを紹介。「人間対人間で接する、おしゃべりをすることで仲良くなった。膝の上にカメラを載せ、日常生活をスライドさせていくようにした」と撮影の経過を話した。

日常を映し出す中で、町民同士がカメラの前でけんかする姿が増え、舩橋さんは浮き彫りになった町民の分断を映画で伝えたいと思った。

舩橋さんは、町民の分断の背景に、放射性物質の健康被害をあいまいにする国の姿勢があると指摘。「国は国民の命よりも、被害を最小化し、賠償額を減らすことを優先した。原発避難の苦しみの本質は、援助がないまま放置され、みんな仲良くしていたコミュニティーがバラバラに分断されたことだ」と述べた。


双葉町民の避難生活について語る映画監督の舩橋淳さん=22日、さいたま市内で

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