2015/05/10

埼玉/「自主避難」一人じゃない 母親らが交流会・ニュースレター…悩みや情報共有

2015年5月10日 朝日新聞アピタル
http://apital.asahi.com/article/local/2015050900024.html

東京電力福島第一原発事故で避難指示区域外から放射線の影響を懸念して避難する、いわゆる「自主避難」の母親らが、県内で交流会を開いたり、ニュースレターを発行したりしてつながりを深めている。自主避難者特有の悩みや情報を共有しあう場をつくることで、慣れない土地での孤立化を防ぐ狙いだ。

県の調査では、避難者は大半が福島県からで、4月1日時点では5508人。関係者によると、このうち自主避難者は約1200人、300~400世帯ほどとみられ、多くは「放射線の影響から子どもを守りたい」と考える人たちだ。

一言で「避難者」といっても、政府から避難指示が出ている強制避難の人と、それ以外の自主避難の人とでは、抱える問題や悩みは微妙に異なる。自主避難者のなかには、気を使って避難者の交流会への出席を遠慮する人もいるという。

福島県南相馬市から、夫と小学生だった2人の子どもの4人で坂戸市に避難した主婦(41)もそんな一人。2011年9月に「緊急時避難準備区域」が解除された後も坂戸にとどまったのは、放射線による健康被害への不安がぬぐえず、「とにかく子どもが心配」だからだ。

自主避難者が抱える思いについて、「『戻れる家があるのになぜ戻らないの?』と聞かれるので、自主避難者は『避難者です』とは言えないんです」と語る。一方で、自主避難者は賠償額が限られており、経済基盤は不安定だという。

やはり、子どもの健康被害の可能性を考慮し、南相馬市からさいたま市に避難したという別の主婦(43)も思いは複雑だ。「『地元(福島)を捨てた』と思われるのではないか」。そう感じることがある。

避難者向け情報誌の編集にかかわる吉田千亜さん(37)=川越市=はこうした声を聞き、昨年6月に自主避難の母親らに呼びかけて「ぽろろんカフェ実行委員会」を設立した。自主避難者が集える場の必要性を感じたためだ。

同10月と今年3月にはニュースレターを発行し、自主避難者の率直な思いや甲状腺がんのデータなどを掲載し、発信した。子連れで参加できるバスツアーなどのイベントも企画する。

「放射線の問題をだれもが同じ感覚で共有するのは難しい。避難をしたくてしているわけではないのに、地元でも避難先でも理解されにくい」と話す吉田さんは、自主避難者にこう呼びかけている。「一人じゃないよ。よかったら参加して」。問い合わせは、吉田さん(090・4226・9259)

(朝日新聞 2015年5月9日掲載)


0 件のコメント:

コメントを投稿