2015/05/05
【子どもの権利条例】被災地にこそ必要だ(5月5日)
2015年5月5日 福島民報
http://www.minpo.jp/news/detail/2015050522591
福島市で県内初となる「子どもの権利条例」制定に向けた動きが活発化している。子どもを取り巻く約30団体で結成した「子どもの権利条例制定推進会議」が市や市議会への働き掛けを強めている。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故という特殊な状況下で生きる子どもたちの権利は最大限、尊重されるべきだ。速やかな制定を望む。
推進会議がまとめた条例の素案は第1章から8章まであり、40の条文からなる。前文では「福島の未来を担う子どもが、放射能汚染のない社会に生まれ、安全安心な環境の中で成長することができるよう(中略)家庭・学校・地域・行政がそれぞれの責任を果たしていかなければなりません」とうたう。その上で「安心して生きる」「自分らしく生きる」「豊かに育つ」「参加する」「守られる」といった権利を幅広く保障することを目的に掲げている。
第7条では「失敗する権利」を明記する。失敗を否定的に捉えるのではなく、失敗から多くを学び成長できるよう支援するとしている。ポーランド人医師で孤児院長だった故ヤヌシュ・コルチャックが唱えた発想に基づく。
子どもの権利条約は国際人権条約で、平成元(1989)年に国際連合の総会において全会一致で採択され、翌年に発効した。日本も国連採択から5年後の平成6年に批准し、憲法に次ぐ位置付けとされている。条約の理念に基づき各自治体が条例を定める。
福島市議会は23年9月、条例制定を求める請願書を本会議で採択した。推進会議は学習会を随時開き、機運を醸成してきた。震災から4年以上が経過したが、機は熟しつつあるのではないか。
県が発表した4月1日現在の県内の子どもの数(14歳以下人口)は23万9128人で、前年同期に比べ4575人減った。減少率は鈍り、原発事故による人口流出に歯止めがかかったことを鮮明にした。子どもは地域の明るい未来をつくる大切な存在だ。子どもたちがずっと住みたいと思うまちづくりでなければ、地域の復興は成り立たない。子どもに優しいまちづくりは本県の将来に不可欠な要素といえる。
中心的役割を担う県ユニセフ協会は「福島で制定すること自体に大きな意味がある。世界にメッセージを発信できる」と青写真を描く。学校現場や経済界などの意見を取り入れ、早ければ年内に制定したい考えだ。震災下に生きる子どもを守り、権利を擁護する条例は、国内外に福島の決意を伝える。
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