2015/05/10 共同通信
http://www.47news.jp/47topics/e/265114.php
東京電力福島第1原発事故から4年たっても住民の避難が続く福島県。事故直後、避難指示が出た地域で飼育されていた牛は国から殺処分するよう指示されたが、一部の農家は今もその場所で飼育している。研究者らは放射線の被ばくの影響を調べるため、農家を支えながら、福島に通い続ける。
第1原発から約6キロの距離にある福島県大熊町の牧場。放射線量が高い「帰還困難区域」だが、約50頭を今も飼育中だ。柵の中の牛を1頭ずつ追い込み、個体の確認をした上で手際よく採血する。血液で栄養状態やDNAの損傷などを調べる。
調査するのは岩手大、北里大、東北大などの研究者ら。定期的に福島に足を運び、避難区域内の10農家の協力を得て、計約170頭(5月現在)を調べている。
「この子は白斑の量が減っていますね」。大熊町の牧場では約10頭の毛に白い部分ができていた。環境の変化によるストレスが原因と考えられるが、岩手大の 佐々木淳 (ささき・じゅん) 助教は「長期的に様子を見ないといけない」と慎重に見守る。
浪江町の山あいにある牧場。この場所は第1原発事故で放出された放射性物質が風に乗って通ったため、今も放射線量が毎時10マイクロシーベルトを超える。ここでは約40頭の牛の首に線量計や衛星利用測位システム(GPS)などが入った装置を取り付け、日々の行動を調べている。
土も回収して放射線量を測り、牛の行動との関連を探る。野草を食べる季節と飼料を食べる季節とで被ばく線量に差があることや、牛の行動によって土壌の放射線量が変化することが分かってきた。
浪江町の牧場主、 渡部典一 (わたなべ・ふみかず) さん(56)は避難先の二本松市から片道1時間以上かけて毎日通い牛の世話を続けている。牛を市場に出して売ることができず、負担も多いが「研究のためデータを残すことに価値がある」と理解を示す。「ここまで生かしてきた以上、牛たちの命を全うさせたい」
2013年度の調査では、この牧場の牛は半年で150ミリシーベルト近く被ばくしたことが判明。一方、死んだ牛を解剖して調べたところ、放射線の影響と考えられる病気はなかったことも分かった。
牛のような大型動物の低線量被ばくの影響に関するデータは、世界的にもほとんどない。北里大の 夏堀雅宏 (なつほり・まさひろ) 教授は「これまで4年間、健康に生きているが、今後どうなっていくか。家畜が低線量の地域に残っている環境はこれまでにないので、継続的な研究が必要」と話している。
帰還困難区域内の牧場で飼育されている牛の胴体にできた白斑の測定作業 =2月、福島県大熊町 |
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