2015/07/21

<避難解除>生活環境整わず…学校再開に不安

2015年7月21日 河北新報
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201507/20150721_63001.html

ことし2月に完成した楢葉中校舎。小学校が一緒に入る構想も浮上する=福島県楢葉町

東京電力福島第1原発事故による避難指示が9月5日に解除される福島県楢葉町で、町内での小中学校再開に向けた協議が進んでいる。放射線や飲料水への不安などから、子どもを持つ家庭の帰町は少ないとみられる中、学校の姿をどう描き、運営するのか。難題が山積している。

<2校統合も検討>
再開時期は2016年4月か17年4月に絞られている。16年の場合、準備期間が短い上、関係者は「最初は戻る町民が少なく、生活環境も整わない中での再開には不安もある」と話す。

17年だと、解除から1年半以上、町に子どもの声が響かない状態が続く。「遅くなれば、子どもが町外の学校に定着してしまう」「町に帰りたい家庭が戻れなくなる」との懸念の一方で、「環境がある程度整ってから、子どもたちを迎えた方がいい」との声もある。

町は当初、小学校2校の児童がともに南小校舎に通うことを想定した。最近は2月に完成した楢葉中校舎で小中学生が一緒に学び、特色ある教育を展開する案が浮上している。2小学校の統合も検討課題だ。

<難しい教員確保>
楢葉町で学校が再開した後、いわき市の仮設校舎をどうするのか。廃止せず、当面「分校」として残すことも制度上は可能だが、「教員確保や学校の一体的運営が難しい」と教育関係者は指摘する。廃止した場合、いわき市から楢葉町へのスクールバス運行も検討課題となるが、1時間から1時間半を要し、国道6号の朝夕の渋滞も激しいなど容易ではない。

楢葉町の学校再開で、保護者は子どもをどこの学校に通わせるのか、あらためて選択を求められる。特に仮設校舎に子どもが通う親は、廃止となれば重い決断を迫られる。

矢内賢太郎教育長は「各家庭にさまざまな事情があり、非常に心苦しい。再開時期にもよるが、保護者には、いずれ最終判断をしていただく時期が来るということを理解してほしい」と話す。

[現 状]いわき市のいわき明星大敷地内にプレハブの仮設校舎と体育館、グラウンドがあり、楢葉中と楢葉北、楢葉南両小の児童生徒が一緒に学ぶ。在籍は町の小学生326人のうち79人、中学生211人のうち64人。仮設住宅や借り上げ住宅からスクールバス13台で通う。

町は5月、教育関係者や保護者で構成する学校再開検討委員会を設置した。委員会は実施中の保護者アンケートなどを基に、再開時期や形態の案を町教委に報告。町教委と町総合教育会議の審議を経て、町が最終判断する。2016年度の態勢を決める作業が9月に始まるため、判断は8月末の見通しだ。

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