2014/10/23

子育てに不安の避難者 届かぬ放射線情報 /福島



 ◇相談や支援の窓口、もっと必要
 福島市にある自宅の窓際には、水の入ったペットボトルがずらりと並ぶ。「放射線を遮る効果があるとテレビで見てから、試しているんです」。山形市の借り上げ住宅で子供2人と避難生活を送る主婦、誉田(ほんだ)広美さん(33)は月に1回ほど、夫が暮らす福島の我が家に通っている。だが、放射線への不安が根強く、暮らすことには踏み切れないでいる。

 長男は5歳になり、避難先の幼稚園で友達もできた。しかし、子供の成長、福島市で離れて暮らす夫と山形市との二重生活による経済的理由から、このまま母子避難を続けるべきか思いは揺れている。

 心のつかえになっているのは、福島の「安全」が目に見えないこと。給食で検出される放射能はどれほどなのか、通学路の除染は進んでいるか、プールの授業はどうなっているか−−。誉田さんは「情報を探すすべを知らないので、情報が入ってこない。不安なままです」と話す。

 福島市は震災後の2011年5月から給食で使う食材の放射性物質検査をし、毎日ホームページで公表している。県も月1回、広報誌を県外避難者に届けている。しかし、そういった情報があること自体が知られず、自治体と避難者の間に情報の行き違いが起きている。

 母子避難した人の中には、夫が自宅に残るなどの理由で、避難先に避難者登録をしていない人もおり、自治体が動向を把握し切れないのが実態だ。誉田さんもそんな一人だ。

 一方、放射線に不安を抱きながらも、新しい場所で生活を始めようとする家族もいる。南相馬市原町区から会津若松市に避難している主婦(35)は来夏、相馬市に家を建てることを決めた。夫の実家は避難区域の南相馬市小高区にあり、古里に近い相馬市で夫の両親と2世帯で住む予定だ。

 放射線量への不安はあったが、既に相馬や南相馬に戻った「ママ友」が後押しした。「あの学校は給食の放射線検査結果が発表されているよ」「(放射線量の低い地域に滞在する)保養プログラムもあるみたい」「あの公園は再除染した」。実際に住む人の生の声を聞き、実態を知らないことによる不安は軽減した。


http://senkyo.mainichi.jp/news/20141021ddlk07010017000c.html

毎日新聞 2014年10月21日 地方版

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