2014/12/29

福島第1原発事故 「特定避難」解除 「一方的」怒りと不安 南相馬、除染進まず賠償打ち切り /福島


 東京電力福島第1原発事故で放射線量が局所的に高いことから政府が指定した南相馬市の特定避難勧奨地点(152世帯)が28日、解除された。しかし、里山や農地の除染が進んでいないことに加え、来年3月に精神的賠償金が打ち切られることなどから、指定世帯の住民たちは「国の一方的な解除」に怒りや不安を募らせている。

 「玄関先の線量が低下しただけで農地や山林の除染も進んでいない。これでは不安はぬぐえず、(私の知る特定避難勧奨地点に)指定された住民は解除に賛成していない」。指定地域の行政区長らでつくる「南相馬・特定避難勧奨地点地区災害対策協議会」の菅野秀一会長(74)が言った。

 「特定避難」は双葉郡などの避難区域と異なり、居住を制限する制度ではない。だが、実際は子供のいる世帯を中心に避難を選択している住民は多い。問題は、指定解除に伴い、来年3月で1人当たり月10万円の精神的賠償が打ち切られるため、経済的に避難生活が継続できなくなる世帯が出てくることだ。

 同市原町区の杉和昌さん(52)は、妻と子ども3人を新潟市内に避難させたまま、指定地域にある自宅に一人とどまって酪農と稲作を続けている。乳牛は搾乳しなければ乳房炎で死ぬため、「自分まで避難したら生活の糧を失う」からだ。

 しかし、自宅周辺や農地の除染は進んでおらず、自宅裏の空間線量は毎時1マイクロシーベルトをはるかに超える場所がある。杉さんは「妻子は戻せないが、賠償が打ち切られれば避難先との二重生活の経済的負担は重い」と語り、来年3月に賠償を打ち切るのではなく同4月以降は段階的に減額していくなどの特例措置を求める。「解除は国が決めることだが、我々が安心して住めるか親身になって考えてほしい」

 また、自宅が同地点に指定され、同市鹿島区の仮設住宅で妻と避難生活を送る嶌影勘さん(73)も、「自宅は山に囲まれていて、近くには線量が高いところがある。安心して暮らせる状態になるまで、指定を解除してほしくなかった」と肩を落とした。

 「我々の声を無視した国の一方的な判断で解除するのはおかしい」。菅野会長は住民の気持ちを代弁するかのように声を荒げた。


毎日新聞 2014年12月29日 地方版
http://mainichi.jp/area/fukushima/news/m20141229ddlk07040092000c.html

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