2015/02/04

「甲状腺がん手術に医療支援を」提言へ~福島・評価部会/OurPlanetTVより


http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1884
OurPlanetTVより
 詳細、動画、資料は上記にてご覧ください。

東京電力福島第1原発事故当時18歳以下だった子どもを対象に実施している福島県の甲状腺検査をめぐり、福島県は2日、「県民健康調査」検討委員会の評価部会を開き、今後の方向性を検討した。この日、清水一雄座長が論点を提示。「1、先行検査で得られた検査結果、対応、治療についての評価」「2、2次検査後、保険診療に移行した際の医療費について」「3、対象者の今後の追跡をどのように行っていくのか」の3点について、それぞれ議論した。その中で、2の医療費については、現在18歳以上の子どもが自己負担している手術費用は、県や国が負担すべきだとの意見で一致した。部会は3月末までに、これらの内容を盛り込んだ提言をまとめる方針。
 
「過剰診断」だが「治療は適切」?

果たして、84例の甲状腺がんは「過剰診断」によるものなのか?
議題1の「検査のあり方」について、東京大学大学院の渋谷健司委員は、ずばり「過剰診断の可能性が高い」と指摘。「国立がんセンターのデータをもとに算出した有病率より60倍も多いがんが診断されている。被曝による異常な事態が起こっているのか、過剰診断なのか2つの可能性があるが、被曝量などからすると被曝影響とは考えにくく、過剰診断と考えている」と述べ、「現行の無症状の住民を対象にした甲状腺がん検診は不利益が大きく、見直しが必要である」として、検査方法や診療ガイドラインを見直す必要があると述べた。
 
これに対し、健診の責任者である福島県立医大の鈴木眞一教授は「診断ガイドラインは過剰診断にならないよう、微小がんは取らないということでガイドラインを作っている。」と反論。世界に先駆けて過剰治療にならないガイドラインを決めた。米国のガイドラインも我々をみて経過観察を取り入れている。」と発言。現在のガイドラインが、「無症状」の患者を対象に検討されたものであり、「過剰診断」を防ぐ目的で世界に先駆けて導入されたものであると主張した。
 
こうした鈴木教授の主張について、委員は概ね同意。福島県立医科大の治療そのものは、ガイドラインに沿った適切な治療が行われているとするとの意見で一致したが、「過剰診断」かどうかをめぐっては、矛盾した意見が平行線のまま議論は終了した。
 
医療費支援と追跡調査については意見一致

原発事故の当時、18歳以下だったすべての人を対象に県が進めている甲状腺検査では、これまでに112人に甲状腺がんやがんの疑いがみつかり、このうち84人が手術を受けている。しかし、2次検査の穿刺細胞診以降は、一般の保健診療に移行するスキームになっている。このため。現在、県内に居住する18才未満の子どもは、福島県民健康管理基金をによる医療の減免が適用されているものの、18才以上の患者の手術費用は自己負担となっている。

これについて、部会では、原発事故さえなければ実施しなかった健診で見つかったがんであるとして、18才未満と同様に、国または県が治療費を負担する方向で意見が一致した。ただ、将来にわたって、どこまで減免するかや、治療データの所有者に対する考え方について整理する必要があるとの意見が出された。
 
また、県外に転出する子たちの追跡についても議論。マイナンバーなどの活用によって追跡するとの意見が出され、いわゆる被爆者援護法における「被爆者健康手帳」を交付すべきなどといった発言は出なかった。
 
腫瘍、3年で17.3ミリの成長か?

議論の過程で、本格調査で新たに甲状腺がんの悪性または悪性疑いと診断された4人のうち、もっとも腫瘍が大きかった17.3ミリの子どもは、先行検査で所見なしのA1判定だったことが、鈴木教授の説明で明らかになった。もし先行検査で見落としがなかったのであれば、1年間に5ミリ以上、腫瘍が成長したこととなる。
 
またA1、A2からB判定に移行した人や逆にB判定からA1、A2に移行した人に関して、鈴木教授は「多発性の病変のある人は変化が大きい。同じ人でも最大径のものが小さくなってもまた反対側にできるなど、様々なケースがある」と述べた。また、腫瘍が大きい人や遠隔転移の人は、比較的サイログロブリンの値が高いと説明した。
 

なお、手術を終えた84例の甲状腺がん確定患者のうち、3人が低分化がんと診断されていることについて、加藤委員は記者会見の中で、生命予後の悪い一般的な低分化がんではなく、チェルノブイリで多発した充実性の乳頭がんである可能性が高いと説明した。
 
また、「福島の甲状腺がんは多発である」と主張する岡山大学の津田敏秀教授の招聘について、清水座長は「とりまとめまでに時間がなく、新年度に見送った」との見解を示した。
次回の県民健康調査「検討委員会」は2月12日(水)に開催される。




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