2015/06/24

避難指示解除で本当に安心が最優先? 危惧される子供や女性のがん多発

2015年06月24日 週プレニュース
http://wpb.shueisha.co.jp/2015/06/24/49724/

福島原発事故以降、放射能から逃れて避難生活を続ける人はいまだに11万人を超える。そんな中、政府は再来年3月までに(一部を除き)避難指示を解除する方針を打ち出した。

健康被害に不安を抱きながらも補償を打ち切られて帰らざるを得ない住民に対し、国は「安心を最優先し、年間被曝量20mSv(ミリシーベルト)の基準を採用した」という。しかし、そもそも国がいう「安心」の基準とは何か。

経産省が2013年3月にまとめた「年間20mSvの基準について」によると、避難の基準を年間20mSvにしたのは、ICRP(国際放射線防護委員会)の放射線防護の考え方を取り入れたとある。「住民の安心を最優先し」、事故1年目から年間20~100mSvの間で最も厳しい数値を避難指示の基準として採用したという。

そして広島、長崎の原爆被爆者の疫学調査の結果から、
(1)100mSv以下の被曝による発がんリスクはほかの要因による影響に隠れるほどとし、
(2)長期間の継続的な低線量被曝ではより健康被害が小さく、年齢による発がんリスクの差を明らかにした研究もない
と断言している。

つまり、福島の放射線は健康被害に結びつくリスクが低いと言っているのだ。だがこれは都合のよい情報だけを選び、意図的な解釈をしていると考えざるを得ない点が至るところにある。

まず、年間20mSvの部分。ICRPは2007年勧告のなかで被曝参考レベルを3段階に分けている。最も高いのは被曝低減対策が崩壊している緊急時で20~100mSv。次が事故後の復旧段階の1~20mSv。そして平時の公衆被曝1mSv以下だ。

国が復興を加速するというのであれば、まず1mSv以下に近づける努力を最大限にしてから住民を帰すべきだ。ところが現実は緊急時の20mSvで問題なしとなってしまっている。

100mSv以下の被曝による発がんリスクは少ないとする国の主張に臨床データを挙げて反論するのは、放射線医学総合研究所で主任研究官を務めたこともある医学博士の崎山比早子氏だ。

「旧ソ連の核製造工場から排出された核廃棄物がテチャ川に流され、流域住民が平均40mSvの被曝をしました。約3万人を47年間追跡調査したところ、線量に比例してがん死者が直線的に増えたのです。1グレイ(約1Sv)被曝すると、被曝していない人に比べて固形がんで亡くなる人は1.92倍、慢性リンパ性白血病を除く白血病は7.5倍にはね上がりました。

また、イギリスの高線量地域では、4.1mグレイ以上の被曝から小児白血病が有意に増えることもわかっています。低線量被曝だから安全だという根拠はないのです」

崎山氏によると、そもそもICRPの委員長自身が2011年9月に開かれた国際専門家会議で放射線に安全量はないと話しているという。

「被曝リスクをゼロにすると社会的なコストが一気に上がる。そこで、原発を使い続けるなら1万人に1人が被曝でがんになってもそれを受け入れましょうというのがICRPの考え。そもそも成人の放射線従事者が実質的に被曝許容とする年間20mSvを放射線への感受性の高い子供や女性にも一律に当てはめるのはおかしい。国が20mSvで帰還を進めようとするのは犯罪的ともいえます」

福島で原発事故当時18歳以下だった約38万5千人のうち、甲状腺がんが確定したのは現在103人。福島県は「現時点で事故の影響は考えにくい」というが、チェルノブイリでは事故後、小児甲状腺がんが多発した。

このままでは大勢の子供たちを危険に晒(さら)すことになるが、本当に国は安心を最優先にしていると言えるのか?
(取材・文/桐島 瞬)

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