被ばくから、親はどうやって子どもを守れるか
ドキュメンタリー映画『小さき声のカノン』 震災から4年 福島の子ども達の安全を守る父と母の試み
子どもを持つ親なら誰もが思うこと。子どもの健康。子どもの安全。食べさせる物に気を配ったり、環境にこだわったり。でも、あまりに大きな問題に直面したとき、親はどこまで子どもを守ることができるのか? 考えてしまいますよね……。
東日本大震災により引き起こされた東京電力福島原発事故から4年。事故による放射能の影響から、子どもたちの安全を自発的に守ろうとしているお母さん・お父さんたちがいます。
“核をめぐる三部作”として国内外で高い評価を受けた『ヒバクシャ ―世界の終わりに』『六ヶ所村ラプソディー』『ミツバチの羽音と地球の回転』の鎌仲ひとみ監督の最新ドキュメンタリー映画『小さき声のカノン』。本作では、チェルノブイリ原発事故を経験したベラルーシの状況を取材しつつ、福島二本松市で子どもを被ばくから守るために奮闘する親たちの活動がつづられています。
震災後、一旦は母子避難したものの……
福島県二本松市。400年の歴史を持つ真行寺の住職・佐々木道範さんと妻の佐々木るりさん。震災後、るりさんは子どもと共に一旦“母子避難”をしましたが、家族は離ればなれになってはいけないと、家族全員で福島に残ることを選択。真行寺の境内で運営している同朋幼稚園の理事長を務める道範さんは、園児のお父さんたちと力を合わせ、自主的に食品の放射能測定を行ったり、園児の生活圏から放射能除染をしたりし続けています。
「子どもたちのため、少しでも安全な食べ物を」と、全国から支援の野菜が届き、園児の保護者たちに野菜を配るるりさん。そんな彼女のもとに、野菜配りを手伝いたいというお母さん仲間が集まり始め、るりさんは「私たちはただの泣き虫のお母さん。それでも何かができる」と、“ハハレンジャー”を結成。道範さんと同じように、通園・通学路の除染を行ったり、子どもたちの被ばくを減らす方法を考えたりする活動を始めます。
同じ「被ばく」に立ち向かうチェルノブイリ経験のベラルーシに学ぶ
一方、1986年にチェルノブイリ原発事故を経験したベラルーシ共和国では、事故から四半世紀を経た今もなお、住民を被ばくから守るための取り組みが続いており、映画ではその様子も映し出されます。体内に取り込まれてしまった放射性物質を排出させ、内部被ばくから住民、特に子どもたちの健康を守る対策が行われているベラルーシ。なぜ、日本では同じような取り組みが行われないのでしょうか……?
福島から非難することを選んだ人。残ることを選択した人。それぞれ、さまざまな思いや事情を抱えながらも、子どもを守りたいという願いは同じです。被ばくという大きな問題に直面する中、どうしたら子どもを守れるのかと困惑し、泣いていたお母さんたち。夫婦で考え方がぶつかってしまうことがあっても、子どものために立ち上がり、自分たちでできることから何か始めようとするお母さん、そしてお父さんたちの姿から、強い決意が伝わってきます。
東日本大震災から4年。“希望”を自分たちの手で具体的に作り出そうとする親たちのドキュメンタリー映画『小さき声のカノン』をきっかけに、子どもの健康、子どもの安全を守るために何ができるかを、一歩立ち止まって考えたいと思います。
昨日地元(埼玉の入間)で見た。
返信削除お寺さんの幼稚園にひとりまたひとりと集まってくるママたち。北海道で関東からの保養を受け入れて駆けまわる「チェルノブイリのかけはし」の人たち。みな、悩みながら地面に足をつけ、泥臭く――そして、ときおり満面の笑みを浮かべてうなづきあっている。
ラストシーンでベラルーシの年老いた女医さんがいった。
「普通の人には、大きな力があるのです」と。
まったくその通りだ。