2018/01/18

OurPlanetTVより/甲状腺検査めぐり海外の専門家交え議論

(甲状腺がんの検診に意味はない、それどころか、過剰診断による弊害が大きいとする意見が、健診を後退させたいとみられる国と福島県への追い風のように吹き荒れています。「3・11甲状腺がん子ども基金」に申請のあった福島県外からの甲状腺がん患者は、県内からの申請者に比べて、重症度が高かったり、転移があったりしています。健診がなされず早期に発見されなかったことが影響しているのでは、と思う時、健診の後退が招く影響が非常に懸念されます。子ども全国ネット)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2210

国際がん研究機関(IARC)環境・放射線部門に設置されている「原発事故後の甲状腺検査のあり方を検討する専門グループ」は11日、福島県を訪れ、甲状腺検査に関し、「県民調査」検討委員会らと意見交換を行った。専門グループは、2月にもリヨンで会議を開催し、来年4月半ばに報告書を完成させる。同報告書は、原発事故後の甲状腺検査を推奨しない見通しで、福島県の甲状腺検査に大きく影響する可能性がある。
 
今回、来日したのは放射線疫学、放射線線量測定、病理学、腫瘍学、内分泌など専門家グループのメンバーら21人。甲状腺検査を実施している福島県立医科大学を視察した後、検査を議論している検討委員会や甲状腺評価部会委員と約3時間にわたって意見交換した。ただ、県の委員への告知が直前だったため、国内の出席者は14人。甲状腺の外科や病理の専門家の参加はなかった。
 
同プロジェクトは、福島県民健康調査の甲状腺検査で甲状腺がんが多数見つかっていることを問題視しており、意見交換の中心は主に「過剰診断」をどう低減させるかといったテーマに終始した。代表を勤める国際がん研究機関環境・放射線部門のヨアキム・シュッツ部門長の挨拶のあと、4人の専門家がそれぞれ30分程度、スライドを使って甲状腺検査に関する見解を発表。その後、質疑や意見交換が行われた。
 
早期発見・早期治療にメリットはない

最初にプレゼンを行ったのは、世界保健機関(WHO)でがんコントロールを専門としている技官のアンドレ・イルバビィ医師。がん検診は、早期発見のメリットがある一方、「擬陽性」の問題や「過剰診断」のデメリットがあることを強調した。またロンドン大学インペリアル・カレッジのジェラルディン・トーマス教授は、甲状腺がんの組織型や予後、遺伝子異の傾向について発表。子どもの甲状腺は3割再発する一方、死亡率は1%であると指摘した。
 
3番目の発表したのは米国のメイヨー・クリニックのファン・P・ブリトー助教。すぐには治療を開始せず経過観察する「アクティブサーベランス」について報告した。神戸の隈病院のデータをもとに、1センチ未満の甲状腺がんは切除してもしなくても再発率に差はなくと強調。95%の若年患者はがんが増大しないとして、「甲状腺がんでは過剰診断のおそれが高い」と指摘しました。
 
さらに最後にプレゼンをしたダトーマス・カレッジのルイーズ・デイヴィス淳教授も隈病院でのアンケート調査を報告。アクティブサーベランスが受け入た患者の三分の二は不安を抱えておらず、三分の一はやや不安がを抱えている実態を紹介し、事前の説明や信頼関係が大切であると主張した。また、多くの人がんは早期診断・早期治療が正しいと思い込んでいると必ずしもプラスではないと強調した。
 
福島県の検診にどう影響?

専門家チームの代表ヨアキム・シュッツ部門長は終了後、同プロジェクトの勧告は、「甲状腺検査を実施すべきではない」とした昨年7月のSHAMISENプロジェクト勧告から大幅に外れる可能性はないと回答。「今回のプロジェクトはあくまでも、今後、同じような原発事故が起きた際に備えるためのもの」と強調するものの、勧告は福島の検診に大きな影響を及ぼす可能性がある。勧告は、2月の会議を経て、4月中旬に出される見通し。
 
なお同専門家グループは、環境省の資金によって実施されており、会議そのものは、原子力安全研究協会が運営している。

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