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伊達市議会の公式動画より
福島県伊達市が、条例で規定されている個人情報審査会を経ず、住民の個人情報を研究者に提供していたことがわかった。さらに研究者らは、研究に同意していない市民のデータも論文に使用していた。6日に開催された市議会の一般質問で明らかになった。
問題となっているのは、福島県立医科大講師の宮崎真氏と東京大学名誉教授の早野龍五氏が論文発表した個人線量計データに関する研究。伊達市が個人情報条例に規定されている審議会を経ず、ガラスバッチ で計測した住民の個人線量データと住所の生データを東京大学の早野龍五教授(現名誉教授)に提供したとして、高橋一由議員が厳しく追及した。
論文では、「GIS(Geographic Information System)」と呼ばれる地理情報システムを利用して、住民の被曝線量の分布を点で示した地図を作成している。高橋議員は、住所を提供しており、個人情報保護条例に反すると批判。これに対し、田中清美直轄理事は「個人情報が特定できないように加工、削除している」とし、住所も「字」までしか提供していないと反論した。
しかし高橋議員は、「宮崎早野論文には、住所の位置情報を100分の1度に丸めていると記載されているが、それでは1キロメッシュになってしまう。伊達市は265平方キロメートルだから、265の点しか表示できない。論文には使えないはずだ」と指摘。6万人の住所を提供したとしか考えられないと主張した。
(左)GISを利用し個人線量の分布を点で示した地図
(右)航空機モニタリングの空間線量データを1キロメッシュで塗り分けた地図
ともに宮崎真氏・早野龍五氏の共著論文より引用 http://stacks.iop.org/0952-4746/37/i=1/a=1
(右)航空機モニタリングの空間線量データを1キロメッシュで塗り分けた地図
ともに宮崎真氏・早野龍五氏の共著論文より引用 http://stacks.iop.org/0952-4746/37/i=1/a=1
同意していない住民データも使用
さらに高橋議員は、研究計画書に「同意した住民のみを対象とする」と記載されているにも関わらず、同意しなかった住民データ約3万人分も含まれていると指摘。解析結果は、海外の科学雑誌に掲載され、ICRP(放射線防護委員会)の防護基準見直しや国の避難基準の緩和に活用される恐れがあるとして、市に対応を求めた。田中直轄理事は「論文の中身については執筆者の二人が対応すべき。依頼文書に基づいた論文に変更があれば、お知らせがあるはずだ」と理解を求めた。
市によると、測定に参加した住民5万8481万人のうち、同意したのは約半数の3万1151人。97人が「不同意」を表明し、残りの2万7233人は同意書を未提出だった。
解析対象者が同意書の数を上回っている(宮崎氏と早野氏の論文より引用)
海外で提案されたビッグデータの活用
ガラスバッチは、特殊なガラス素材を使用したライターほどの大きさの線量計だ。首にぶら下げたり、胸につけて生活することで、個人が受けた積算の放射線量を計ることができる。通常は、原発作業員やレントゲン技師などが被曝管理をするために身につけるものだが、原発事故後は、住民の個人線量を把握するため、伊達市をはじめとする多くの自治体で導入されてきた。
早野氏は昨年2017年3月15日の最終講義で、パリで開催された原子力関係の会議で、「伊達市のあの膨大なデータをなんとかしませんか」と提案されたと紹介。6万人の「ビッグデータ」と航空機モニタリングから推定される居住地付近の外部被曝線量のつきあわせたデータベースを作成し、2016年12月に論文を発表した。
論文では、空間線量をもとにした線量基準は、個人線量計の実測値より4倍高いと指摘。さらに2017年の公表した論文では、2011年当時、毎時3・5マイクロシーベルトを超え、市内で優先的に除染を行った「Aエリア」に70年間住み続けたとしても、積算線量は20ミリシーベルトに満たないと結論づけた。
早野氏は講演で、「これはショッキングなほどに低い数字です。」と述べ、国連科学委員会(UNSCEAR)の報告書にも採用される予定」と紹介している。また、政府の放射線審議会や原子力規制委員会も、この結果を重視しており、住民の被曝管理を「空間線量」ではなく、「個人線量」で行う方向に方針転換を図っている。
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