http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2330
第61回日本甲状腺学会学術集会の立て看板。会場内は撮影禁止とされた
福島県の甲状腺検査で、200人を超える子どもに甲状腺がんが見つかっている問題を受け、日本甲状腺学会が、小児甲状腺がんの診療ガイドラインを策定する。福島医科大学の鈴木眞一教授が、日本甲状腺学会の学術集会で報告した。来年秋までに公表する。
策定の方針が示されたのは「小児甲状腺がん診療ガイドライン」。学術集会の初日にあたる22日に、ガイドラインのおおまかな方向性が固まり、今後、文献調査や重要課題の絞り込みを行っていく。事務局を担うのは福島県立医科大学。日本甲状腺学会理事長で群馬大学山田正信教授が統括し、治療の責任者は隈病院の宮内昭院長が務める。また査読委員には、福島県立医大副学長山下俊一教授ほか3人が担当することが決まった。甲状腺学会のほか、内分泌外科学会、小児内分泌学会、乳腺甲状腺超音波医学会も協力する。
小児甲状腺がんの診療ガイドラインをめぐっては、福島県の甲状腺検査で予想を超える小児甲状腺がんが見つかり、「過剰診断」論が浮上する中、「県民健康調査」検討委員会や甲状腺評価部会では度々、その必要性が指摘されてきた。2015年5月17日に公表された「中間とりまとめ」にも盛り込まれたが、その後3年もの間、具体的な方向性は示されていなかった。
参考:甲状腺評価部会「中間とりまとめ」
http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/115335.pdf
米国甲状腺学会(ATA=American Thyroid Association)は2015年に、初めて小児甲状腺がんに関するガイドラインをまとめた。ATAは同年、成人のガイドラインも大幅な改訂を実施。甲状腺全摘手術を基本とする従来の方針を見直し、予後のよいがんは「片葉」のみを切除する、日本型の「甲状腺温存手術」を導入した。また微小乳頭がんに対しては、手術をせずに経過をみる「アクティブ・サーベイランス(非手術経過観察)」も認めた。
しかし、「小児ガイドライン」では、「アクティブサーベランス」も「片葉切除」も推奨せず、引き続き「全摘」と「放射性ヨウ素内用療法」を基本としている。全摘した場合、血中サイログロブリン(Tg)濃度が再発癌マーカーとなりうるため、この数値を監視し、リスク段階に応じて、TSHを厳しく抑制する(ホルモン補助療法)ことを基本指針としているためだ。ただし米国の「小児ガイドライン」では、超音波によるスクリーニング検査で見つかったがんは対象としていないため、専門家からは、福島県民健康調査などを考慮に入れた国内のガイドラインの策を求める声があがっていた。
ATA 2015 management guideline for children with thyroid nodules and differentiated thyroid cancer
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4854274/
ATA2015小児甲状腺結節・分化がんの治療ガイドラインについて
山下 俊一(長崎大学原爆後障害医療研究所放射線災害医療研究分野)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesjsts/32/4/32_274/_pdf
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