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原発事故後、福島県で実施されている小児甲状腺検査をめぐり、今年3月までに「甲状腺検査サポート事業」で医療費を受給した患者233人すべてが甲状腺がん患者であることがわかった。県議会の答弁で判明した。検討委員会のデータと合算すると272人となり、これまで公表されていた人数を大幅に上回ることとなる。
233人全てが甲状腺がん
2015年7月にスタートした甲状腺サポート事業。県の甲状腺検査を受け、2次検査で結節性病変などが見つかり、保険診療となった患者に対して医療費を支給する制度だ。12月12日付で県が受給資格を見直し、2次検査対受診者に限っていた対象者を広げ、事故当時福島県に居住していた18才以下の子どもで、一度でも甲状腺検査を受けていれば受給できるようになった。また、県外避難などが理由で、一度も1次検査を受けていない人も柔軟に対応する。
この見直しを受け、いわき市選出の古市三久議員が受給状況について質問。これまでに医療費の交付を受けた233人の疾患の内容を訪ねたところ、県民健康調査課の鈴木陽一課長は「(233人)全てが甲状腺がんで、そのうち手術を受けた人が82名」と答弁した。
福島県はこれまで、甲状腺検査サポート事業の対象者は「結節性病変等」と説明してきた。日本甲状腺学会の定めた「甲状腺結節取り扱い診療ガイドライン」によると、「結節性病変等」は頻繁に見つかる病気で、悪性腫瘍のほか良性腫瘍や、腫瘍ではない病変も含まれる。しかし、県はサポート事業の受給資格を「甲状腺がん患者」に限定し、「結節性病変」の患者全体を対象としているわけではないことが判明。検討委員会で公表されている202名よりはるかに多い患者の存在が明らかになった。
古市議員は、甲状腺検査サポート事業と県民健康調査結果との突合をしないのかと質したが、県は紐付けはしないと表明。全数把握のために同事業活用しないとの考えを示した。
検討委員会より多い人数の甲状腺がん症例を県が把握しながら、全体像の把握に活用しないのは、理解に苦しむ。そこで、OurPlanetTVでは公表されているデータをもとに、可能な範囲で最低限可能な計算を試みた。
福島県が18歳以下の医療費を無料にしているため甲状腺検査サポート事業の受給者には、18才以下の患者は一人もいない。このため、検討委員会で公表されているデータのうち、今年3月までに甲状腺がんと診断された18歳以下の45人は合算することができる。この結果、少なくとも277人が甲状腺がんの疑いと診断された患者がいることがわかった。
1巡目に細胞診等で悪性疑いであった子の平成 23 年 3 月 11 日時点の年齢による分布
2巡目:2018年3月末で18歳以下(事故当時11才以下)は26人
2巡目に細胞診等で悪性疑いであった子の平成 23 年 3 月 11 日時点の年齢による分布
3巡目:2018年3月末で18歳以下(事故当時11才以下)は8人
3巡目に細胞診等で悪性疑いであった子の平成 23 年 3 月 11 日時点の年齢による分布
ただし県の発表により、手術後の病理診断でがんではなかった患者がいる。検討委員会で公表された「良性結節1名」と甲状腺検査サポート事業」の報告で発表された濾胞性腺腫などが5名だ。これら偽陽性だった患者を除くと、現時点で県のデータから把握可能な甲状腺がん患者は少なくとも272名にのぼることがわかった。
県の担当者によると、甲状腺がんでも、濾胞性腺腫と濾胞がんは手術をして病理診断をしないと、悪性かどうかわからないケースは、悪性腫瘍でなくとも手術費用は支給するが、良性腫瘍との診断で手術をするケースは対象から除外されるという。ちなみに、乳頭がんは穿刺吸引細胞診によって、ほぼ悪性かどうかの診断がつくとされている。
甲状腺がんの全体像把握に消極姿勢の福島県
OurPlanetTVの取材に対し、県民健康調査課は、甲状腺検査サポート事業は申請主義なため、数の把握にはなじまないと回答。同事業は、避難指示区域で医療費が減免されている人や生活保護受給者なども除外されているため、より多くの人数が漏れているとの見方を示した。
一方、甲状腺評価部会で、地域がん登録によりがんの全数を把握する方針が示されていることについても質問があったが、菅野地域保険課長は、がん登録は、がんの診断を受けた時点の住民票住所で地域登録されるため、原発事故当時、福島県に在住していた患者の把握は難しいと答弁した。
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