2020/11/16

OurPlanetTVより/宮崎早野論文「アワプラの指摘で誤り認識」〜捏造批判の回避狙いか

 

「第1論文」表1の2014年Q3に2万1,080人と記載されているが、配布した人数は1万6,037人。



福島県伊達市住民の被曝データを使って執筆した論文をめぐり、不透明な事態が続いている。論文が掲載された英国の科学雑誌「Journal of Radiological Protection(以下 JRP誌)」が論文を撤回する際、誤りがあると指摘していた検査人数について、福島県立医科大学(以下、福島医大)は、OurPlanetTVの指摘を受けて修正を申し出たと述べていることがわかった。この誤りをめぐっては、複数の科学者がデータの捏造を疑う厳しい批判論文を投稿しているが、これらの指摘を回避する狙いがあると見られる。OurPlanetTVが今年2月に報じた際には、宮崎氏も早野氏もコメントを避けていた。

撤回されたのは、福島県立医科大学の宮崎真講師と東京大学の早野龍五名誉教授が、2016年と2017年に投稿した2つの論文(以下「宮崎早野論文」で、そのうち、撤回コメントで誤りが指摘されたのは、空間線量率と個人線量結果との関係を解析した「第1論文」の2014年3期のデータ。実際に回収された個人線量計よりはるかに多い約21000人のデータが解析されていた。

この誤りをめぐっては、OurPlanetTVが今年2月、JRP誌に「宮崎早野論文」に対する複批判論文を複数送っている研究者らの取材を通して存在を把握。伊達市への取材をもとに、当時、回収したガラスバッヂ数よりも、論文に記載されている解析人数が多いことを確認し、宮崎氏と早野氏を取材。福島医大の広報は当時、「いただきましたご質問につきまして、伊達市の調査委員会で現在調査中であり、今回のご質問についての回答は控えさせていただきます。」と回答。その内容も含め、2月28日に記事を掲載した。

実測数より多いデータ解析〜宮崎早野論文に新疑惑
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2470


その後、高エネルギー加速器研究機構の黒川眞一名誉教授ら複数の研究者チームがJPR誌に対し、この誤りを指摘する批判レターを投稿。データが捏造された可能性があることを詳細に指摘していた。

発覚経緯が不明なまま、突如、登場した「誤り」指摘の撤回コメント こうした経緯にもかかわらず、JRP誌は7月、論文の撤回時に突如、何の理由もなく、「第1論文」の2014年データに誤りがあると公表。しかし、研究者が指摘したデータの捏造疑惑に関する注釈は一切なかった。そこで、OurPlanetTVは共著者の宮崎氏と早野氏およびJRP誌に誰がいつ誤りを認識したのかを確認。なぜ、東大や医大での研究不正調査でも浮上してこなかった誤りが、急に浮上したのか尋ねた。

その結果、福島医大は、誤りの可能性を認識したのは、「貴OurPlanet-TV白石様から2月19日に当学広報にいただいたメールのご指摘から」と回答。研究者から批判論文が寄せられていることに対しては、一切、言及しなかった。また伊達市の調査では、2014年第3期のデータを伊達市から宮崎氏らに提供した記録がないことについても質問。いつ入手したのかを聞いたところ、福島医大は、「伊達市から2015 年8 月12日にすべてのデータを受け取り、その中に 2014Q3 のデータを含むことについても当時の伊達市担当者に確認した上で、正しいデータとして取り扱ってまいりました。」との回答した。

福島医大からの1回目の回答
福島医大からの2回目の回答

しかし、2015年8月12日のデータ授受をめぐっては、その直前、宮崎氏が伊達市の職員をメールを交わし、この時点ではまだ2014年第3期のデータが存在していないことを確認している。

8月3日(月)伊達市職員Yさん→宮崎先生

なお、誠に申し訳ありませんが、ガラスバッジ結果については、1年前(H26.6月)までしかデータベース化していませんでした。

これ以降(H26.7月〜)については、一部、今月の側方作業で作成されますが、確定(H27.10がつ)時に、データベース情報を正式に実施するので、直近、一年分については、秋期に確定データでお渡しすることでいかがでしょうか。


宮崎先生→伊達市職員Yさん

データベースの件、承知しました。

現時点でデータベースにあるデータと、第7次航空機モニタリング調査までの対応はすでに早野先生よりなされておりますので、H26.6までのデータ受領は急ぎません。(略)

以降のデータは秋季になる、とのことですので、そのタイミングで追加データをお渡しいただけましたら、と思います。


これについて尋ねたところ、福島医大は、「ご指摘のメールのやり取りは承知しておりますが、2015年8月12日に受領したデータに 2016年度分(本文ママ)と認識されたデータがあったため、伊達市に確認したところ「そうである」とのことで解析を進めました。」と回答。「根拠はまさに伊達市の確認のみですが、当時の宮崎にとっては、 伊達市に解析結果の蓋然性など含め、直接確認することが正しいデータを扱っているかど うかを確かめる唯一の手段でした。」などと述べ、全て伊達市担当者に責任があるとする見解を示した。

また福島医大が回答を寄せるまでに1週間以上かかった理由を質したところ、「事実関係の整理と、JRP 誌への申し出などを行っていたため」と釈明。「本学及び宮崎としましては、正しいデータの再提供を受け論文の修正・再投稿などを行うことが責務と考えていましたが、本学、宮崎ともども研究委託の中止とデータ再提供が不可能であることを伊達市からすでに通知されており、論文そのものも撤回となり、その責務を果たすことが出来ません。以上、事実関係も含めて研究者自身が自己検証する材料も資格も失っていることからこれ以上の回答については差し控えさせていただきたく存じます。」と、論文の検証を行わない方針であることを明言した。

一方、早野氏はデータを受け取ったのは宮崎氏だとして、いつどのようにデータを受け取ったかは知らないと回答。また一方的に、撤回コメントに誤りを記載した「JRP誌」は、質問を投げ掛けてから2ヶ月以上経つが返信がない。

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