9/22党強新聞 WEB から
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2011092202000041.html
福島原発の事故後、各地で食品についての放射性物質検査が続く中、八月下旬から目立ってきたのが、キノコやイノシシ、シカなど野生動植物でセシウムが暫定規制値を超えたという報告だ。福島県だけでなく、宮城県や北関東にまで広がっている。消費者は注意深く対応する必要がある。 (白井康彦)
キノコ採りのシーズンを迎えた今秋、福島県や北関東各県は、キノコについての検査や住民への注意喚起で忙しい。十五日には、政府が、福島県の東部と中部の全市町村、西部の猪苗代町の計四十三市町村で採れる野生キノコの出荷停止を同県に指示した。
「福島県棚倉町のチチタケの検査結果がショックだった」と話すのは、北関東の行政担当者ら。茨城や栃木との県境に近い棚倉町で今月三日に採取された野生のチチタケが、一キロ当たり二万八〇〇〇ベクレルという高濃度の放射性セシウムを含有。政府が一般の食品について定めた放射性セシウムの暫定規制値一キロ当たり五〇〇ベクレルを大幅に上回った。
野生キノコのセシウム検査が始まった周辺の県のうち、茨城県高萩市で採取されたチチタケからも暫定規制値を上回る放射性セシウムが検出された。
野生キノコは、山林の土や落ち葉に付着した放射性セシウムを吸収しやすい。セシウムの降下量が多かった地域の山林では、セシウムに汚染された野生キノコが多くなる。こうした山林では、セシウムを吸収した植物を食べる野生のイノシシやシカも、セシウムに汚染されやすい。
実際、福島県内だけでなく、宮城県角田市や水戸市のイノシシ、栃木県日光市のシカからも、暫定規制値を超える放射性セシウムが出た。「セシウム検査をすれば、規制値を超えることがあると思っていた」と北関東の猟友会関係者。
魚は養殖物以外は野生(天然)。暫定規制値を超える事例は、福島県沖の海底に生息していた魚種で目立ち、アユ、ワカサギなどの淡水魚でも出ている。
赤城山のカルデラ湖である赤城大沼(前橋市)で取られたワカサギやウグイにも、放射性セシウムが暫定規制値を超えた例が八月下旬以降にあった。事故が起きた福島第一原発との直線距離は、約百八十キロ。ワカサギ釣りや紅葉などが楽しめる観光地だけに、漁協や観光の関係者らがショックを受けている。
◆チェルノブイリ後広範囲で深刻
キノコやイノシシなどの野生動植物の放射能汚染は、一九八六年、旧ソ連で起きたチェルノブイリ原発事故の後で深刻だった。被災地支援のために現地を三十数回訪れた「NPO法人チェルノブイリ救援・中部」(名古屋市)の河田昌東理事は、今のロシア、ウクライナ、ベラルーシの三国だけでなく、ドイツや北欧諸国などでも野生動植物の放射能汚染を確認。「ノルウェーのトナカイまでセシウム汚染が目立っていた」と振り返る。
河田さんは「平地と違って山林での放射性物質の除染は難しい」として、チェルノブイリ事故後と同様、今回の事故でも野生動植物の放射能汚染が長く続くと予想。「チェルノブイリの教訓を生かし、日本でも自治体などが野生動植物をもっとしっかり検査すべきだ」と強調する。
ウクライナやベラルーシなどでは、野生動植物の放射能汚染の危険性は国民に周知されている。国内でも、同様に意識を高める必要があるという。
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