2017/03/13

民の声新聞より/ 県民健康調査 甲状腺エコー検査〝縮小〟にNO。「汚染は広い。むしろ福島県外でも必要」福島市で「3・11甲状腺がん子ども基金」顧問の牛山元美さんが講演

(「民の声新聞」は、福島県内を中心とした市民の動きや市民に必要な情報を精力的に取材し発信してくださっています。今回は、福島県内で行われた講演のまとめです。ぜひ、下記サイトより全文をお読みください。 子ども全国ネット)

http://taminokoeshimbun.blog.fc2.com/blog-entry-128.html
2017/03/06

医師で「3・11甲状腺がん子ども基金」顧問を務める牛山元美さん(神奈川県相模原市、さがみ生協病院内科部長)が5日午後、福島県福島市で講演し、福島県内で実施されている甲状腺エコー検査を縮小させる動きが加速している現状に「NO」を突きつけた。第三者機関の設置に躍起になっている星北斗座長(星総合病院理事長、福島県医師会副会長)を「暴走だ」と批判。放射性物質の拡散が福島の県境ではとどまらない事、基金が療養費を給付した甲状腺ガン患者が神奈川や埼玉、長野にも及んでいる事などを挙げ、「福島県外でも国や東電の責任で甲状腺エコー検査を実施するべきだ」と語った。NPO法人「ふくしま30年プロジェクト」(阿部浩美理事長)の主催。


【男女比がベラルーシと酷似】
 福島県の県民健康調査では2016年12月31日現在、「一巡目(先行検査、2011年度~2013年度)」と「二巡目(本格検査、2014年度~2015年度)」を合計すると、疑いも含めて185人(116人+69人)の小児甲状腺ガンが確認されている。牛山さんは「もし小児甲状腺ガンの発見がスクリーニング効果によるものならば、一巡目の検査で116人を〝刈り取った〟事になり、二巡目ではほとんど見つからないはずだ。それが69人も見つかった。しかも、そのうち63人は一巡目でA1(結節又はのう胞が無い)もしくはA2判定(5ミリ以下の結節または20ミリ以下ののう胞)だった人たち。ガン化のスピードが速く、一番驚いたのが医師だった」と指摘。
 2007年のデータでは、ガン登録高精度地域(宮城、山形、福井、長崎)での年間10万人あたりの小児甲状腺ガン発生率(15歳~19歳)は1.7人。福島県の県民健康調査の185人を換算すると年間10万人あたりの発生率は11.4人になるとして「原因などを含めて現段階で断定的な事は言えないが、福島で小児甲状腺ガンが多く見つかっているという言い方は正しいと思う。事実として子どもの甲状腺ガンと向き合わないといけない」と語った。
 甲状腺ガンの男女比についても牛山さんは触れ「自然発生型は女性が際立って多い。福島で今、起きている事は今まで日本で起きていた事と違う。不自然だ」と指摘した。一般的に甲状腺ガンの男女比は男1に対し女4だが、福島県の県民健康調査では一巡目が1:2.0、二巡目はさらに差が縮まって1:1.2になっている。松崎道幸医師が2016年3月に作成したデータでは、チェルノブイリ原発事故後のベラルーシでも、診断時の年齢が4歳~14歳で1:1.6、15歳~18歳で1:2.0と福島のケースと似ているという。
 だからこそ、ていねいな検査と分析が今後も必要になる。しかし、現実には逆行する動きが着々と進められている。


講演で「汚染や被曝リスクは福島だけの問題では無い。福島県外でも国や東電の責任で甲状腺検査を実施するべきだ」と語った牛山元美さん=福島市・サンライフ福島

【「不安解消するなら検査を」】
 
福島で加速しているとの指摘が多い甲状腺エコー検査「縮小」の動き。牛山さんは「地元紙の福島民友が非常に熱心」として、これまでの記事を紹介した。同紙は2016年8月8日付の一面で、県民健康調査検討委員会の星北斗座長のインタビュー記事を掲載。「早ければ9月にも、甲状腺検査の対象者縮小や検査方法の見直しを視野に入れた議論に着手する」と〝スクープ〟した上で、社説でも「検査のメリットとデメリットを総点検し、県民にとって最善の検査体制を再構築すべきだ」、「検査は、県民の不安を解消し、健康を保つために必要だが、マイナスに作用するようなことは避けなければならない」などと主張している。
 
これに呼応するように、2016年12月には日本財団の笹川陽平会長や福島県立医大の山下俊一副学長らが福島県の内堀雅雄知事を訪問。同年9月に福島市内で開催された「第5回福島国際専門家会議」を受ける形で提言書を提出し、「健康調査と甲状腺検診プログラムは自主参加であるべきである」、「福島事故による一般住民の甲状腺被ばく線量はチェルノブイリ事故に比べはるかに低く、甲状腺異常の増加は高性能な超音波診断機器の導入に伴うスクリーニング(検診)効果と考えられる」、「一つの可能性として、福島原発事故の健康影響の低減と健康モニタリングに関する課題を取上げる専門作業部会の招集がある」などと、事実上の検査縮小を求めた。
 
そして、年末の検討委員会で突如、星座長から提案された「第三者機関」の設置。「他の委員から特段、異論が出なかった」として、個人的な提案がなぜか「ボールは県に投げられた」として、福島県は国や国際機関と人選などの相談に着手している。先月の会合でさすがに委員から反対意見が出されたが、歯止めをかけるに至っていない。チェルノブイリ原発事故の被害を長く取材している広河隆一さんは「何を画策しようとしているのか。誰が誰を選ぶのか非常に重要だが、人事権は僕らには無い」と危惧する。原発事故による健康被害など生じていない事にしたい勢力に都合の良い結論が導き出される恐れがあるからだ。牛山さんも「誰の指図でこんな事が進められているのだろう。ガンが見つかったら誰だって嫌だが、甲状腺検査の目的をきちんと説明してあげれば良いと思う。福島県民の不安解消につなげるのなら甲状腺検査をして、何も無くて良かったねとなった方が良い」と語った。

【「事故は医学の常識変えた」】
 
牛山さんが福島県内にとどまらない甲状腺エコー検査を求めるのには理由がある。茨城県北茨城市で実施された検査で、4777人のうち3人で甲状腺ガンが見つかった事が一つ。年間の発生率に換算すると、10万人あたり15.7人に相当するという。
 
自身が顧問を務める「3・11甲状腺がん子ども基金」(崎山比早子代表理事)では、原発事故以降に甲状腺ガンの手術を受けたか、ガンと診断された25歳以下の人を対象に10万円を給付する「手のひらサポート」を展開しているが、これまで3回、66人への給付のうち16人が福島県外の患者だった(宮城、秋田、茨城、群馬、千葉、埼玉、東京、神奈川、長野、新潟)。福島県以外では大規模な甲状腺エコー検査が実施されていないため自覚症状が出てから受診するケースが多く、重症化しているケースが目立つという。福島の患者50人のうち5人は、県民健康調査では甲状腺ガンが見つからず、別の医療機関で改めて検査を受けてガンが発見された。甲状腺検査を縮小するどころかむしろ拡充する必要がある、というのが牛山さんの考えだ。
 
(続きはサイトでお読みください。当日配布の資料画像もあります)

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