2012/08/21

議員たちの反応は……?国民は見てますよ~。「原子力規制委員会の人事について」


原子力ムラの人間が人事に抜擢されるかもしれないということで、現在大きな問題になっている「原子力規制委員会」の人事。これに「NO!」を突きつけようと820日、参議院議員会館で院内集会が開かれました。この人事に反対してもらうよう、国会議員へロビー活動も行われましたので、その結果もまじえてお伝えしたいと思います。
                           (ママレボ編集チーム 和田秀子)


■何が問題? 原子力規制委員会の人事

 主催のFoEJapanによると、この日はもともと「原子力安全規制組織等改革準備室」に対して、人事の撤回を求める政府交渉を行う予定だったそうです。しかしなんと、これまで二度にわたるドタキャンがあっただけでなく、今日に至っては「いくら日程を変えても、市民の要請にいちいち応じることはできない」という信じられない理由で話しあいを拒否してきたとのこと。「これまでいろんな省庁と話しあいを行ってきましたが、こんな理由で拒否されたことは一度もありませんでした」と、FoEJapanの満田さんも憤りを押さえられない様子でした。

『抗議!国民に対する最低限の説明責任も果たそうとしない原子力安全規制組織等改革準備室の対応』(FoEJapan ブログより)

 
 しかし、そもそもこの人事、いったい何が問題なのでしょうか?
 国会議員ですら、よく分かっていない方も多いそうなので、要点を分かりやすくまとめてみたいと思います。

 まず、「原子力規制委員会」とは、何なのでしょうか?

 昨年の福島第一原子力発電所の事故がキッカケとなり、これまで原子力行政を担ってきた「原子力安全・保安員」や、原子力安全委員会」といった機関が全く本来の役割を果たしていなかったことがが露呈しましたよね。その結果、原子力行政を担う国や電力会社などにに対する国民の信頼は地に落ちました。

 そこで政府は、それらの反省を踏まえて「利用と規制の分離」「原子力安全規制に対する国民の信頼を得る」「原子力ムラからの影響排除」という3つの目的のために「原子力規制委員会」を設置することにしたのです。

 つまりひとことで言えば、今までのように政府と原子力産業が「なぁなぁ」の関係で事を進めるのではなく、「NO!」というべきところは「NO!」と言って厳しく監視できる体制を作ろうということです。
 これを遂行するためには、当然ながら、原子力産業から甘い汁を吸っている(あるいは直近で吸っていた)人が人事に抜擢されてはダメなのです。

 そのため、「原子力規制委員会設置法という法律の中では、『原子力に係る精錬、加工、貯蔵、再処理もしくは廃棄の事業を行う者(原子力事業者)の役員・従業員は、委員長または委員に就任することができない』と定めていますし、政府もわざわざ文書を出して、『就任前直近3年間、原子力事業者およびその役員であった者を除く』とうたっています。
 しかし驚くべきことに、こうした点をいっさい無視して決められようとしているのが今の人事です。


■原子力ムラの人たちが、人事に大抜擢!?

 繰り返しますが、なんと、こうした法律や政府自らが発表した文書をいっさい無視して、原子力ムラの中枢にいる人たちが原子力規制委員会の委員長ならびに委員に抜擢されようとしています。

 以下をご覧ください。(FoEjapan ホームページより抜粋)

*****
×田中俊一氏:【原子力ムラ・不適格】(委員長候補)
(
)日本原子力研究開発機構副理事長、原子力委員長代理、原子力学会会長を歴任。
長年にわたって「原子力ムラ」の中心で活動。「原子力委員会」は国の原子力推進機関。原子力事業者と秘密会合を重ねて原子力を推進するなど公正さに疑惑がもたれている。副理事長であった「(独)日本原子力研究開発機構」は、政府の原発推進、核燃料サイクル推進の研究開発機関。
さらに、田中氏は、原子力損害賠償紛争審査会において、最後まで自主的避難者に対しての賠償方針に反対。「100mSvというのは健康に大きな影響がないということ。このあたりをどう今後住民に、折り合いをつけていただくかということが大変大事」と発言。


×更田豊志氏:【原子力ムラ・不適格】(委員候補)
日本原子力研究開発機構の安全研究センター副センター長。福島第一原発事故後も原発推進を前提とした「原発の継続的改善」を主張。日本原子力研究開発機構は、「原子力ムラ」の当事者。安全規制対象の「もんじゅ」を運営する日本原子力研究開発機構の現役幹部を登用することは、欠格要件に該当する。


×中村佳代子氏:【規制対象事業者・不適格】(委員候補)
中村氏の所属する(公益社団法人)日本アイソトープ協会は医療用放射性廃棄物処理工場を運営し、最終処分場の設置を計画中で、原子力安全規制の対象になる事業所である。


×大島賢三氏:【外務官僚・不適格】(委員候補)
国連大使、JICA副理事長・顧問を歴任した外務官僚。政府から独立して政策を決定し、執行する原子力規制委員会に、そもそも官僚OBは不適格。

*****
 なんだか、あまりにも分かりやすすぎて、逆にビックリしてしまいます。
 日弁連も、この人事は原子力規制委員会設置法に違反する可能性があると声明を発表しているのです。
 ところが、社民党の福島瑞穂議員が国会で、この人事の問題点を挙げたところ、、
「現在、職務に就いている人については、原子力規制委員になる前に辞めるから差し支えない」という趣旨のことを、細野大臣は発言したのだとか。
 ならば極端な話、「東電の元会長、勝俣氏でも(東電を辞めたのだから)委員になれるのではないか」と、この日も福島議員は憤りをあらわにしていました。

 ■原発再稼働し放題に?
 この日、院内集会にかけつけていた社民党の服部良一議員によると、この人事は「今週の木曜日に採決される可能性が高い」とのこと。いったん委員に就任してしまうと、犯罪でも犯さない限り総理大臣でも罷免できません。
 もし、現在名前が挙がっている人たちが委員長ならびに委員に決定すると、現在国民的議論になっている原発の再稼働がどんどん進められ、また「年間の被曝量1ミリシーベルト以上」の地域が避難の対象として含まれるかどうかで正念場となっている「原発事故・子ども被災者支援法についても、うやむやにされてしまう可能性があります。
 決して、私たちに無関係な人事ではないのです。
 しかし実は、国会議員自体も、この人事の問題点についてあまりよく知らない&関心が薄い様子。
 8月から市民団体らが、「市民500人で国会に行こう!」と題して、国会議員をまわってアンケートの協力を求めていたそうですが、すでに永田町は選挙モードで反応はいまひとつのようです。

■とにかくラストスパートで議員に意見を伝えること
 この日は私も、参加者の方といっしょに以下4名の国会議員をたずねましたが、大変残念な反応ばかりでした。少しご紹介しておきたいと思います。

 西村智奈美議員(民主党)http://www.dpj.or.jp/member/203/
 秘書の女性が対応。西村議員自身がこの人事に対してどういう考えを持っているのかは認知していない。アンケートは本人に渡しておくとのこと。

 古本伸一郎議員(民主党)http://www.dpj.or.jp/member/215/
 若い男性の秘書に、「前もってアポも入れずに来るとは非常識だ」とくどくどと叱られる。とりあえずアンケートは議員本人に渡しておくとのこと。

 佐々木 隆博議員(民主党)http://www.dpj.or.jp/member/176/
 ベテランの男性秘書が対応。現在、佐々木氏は農林副大臣を務めているので、政府の立場でできることをやっていこうというスタンス。この人事については関心を持っているのだが、個人的な意見を述べられる立場ではないとのこと。


*****
 「こりゃ、ダメだ……」とガックリしてしまうような反応だったのですが、まだ採決までわずかながら時間が残されているので、最後まで訴え続けるしかないのだろうと思います。
 またFoEJapanのブログには、今回、各国会議員へ行ったアンケートおよびロビー活動の結果が一覧でまとめられているので、こうした対応を見て、次期選挙に投票する議員を決めるということも大事ではないでしょうか。
 IWJでも、市民のロビー活動の様子を中継していました。http://iwj.co.jp/

 本日21日(火)12時~13時も衆議院第二議員会館前にて抗議行動が行われるようなので、参加できそうな方はぜひ足をお運びください。

 とにかく、いっさい国民の声に耳を傾けようとしない政治の在り方を変えなければならない、と強く実感した一日でした。

0 件のコメント:

コメントを投稿