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「手抜き除染」横行の情報を得て、取材班は現地に向かった。
「袋に詰めなければならない草木をここに捨てました」。20代男性が取材班を案内したのは、県道から20メートルほど斜面を下りた雑木林だった。枯れ葉や枝が幅1メートル、長さ50メートルにわたり散乱し、高い所は1.5メートルほどの山になっている。
楢葉町の除染を受注したのは、前田建設工業や大日本土木などの共同企業体(JV)。作業ルールでは道路の両側20メートルの幅で草木や土を取り除き、袋に詰めて仮置き場に保管しなければならない。空間線量を毎時0.23マイクロシーベルト以下に下げていく長期的目標の第一歩だ。
男性は昨年10月、都内のハローワークで3次下請け会社の求人を見つけ、働き始めた。道路の両側20メートルにはったピンクのテープの内側で、のこぎりで木を切り、草刈り機で刈り取った草や落ち葉を熊手でかき集めて袋に詰め、運び出す作業のはずだった。
ところが、大日本土木の現場監督は当初から、作業班約30人に「袋に詰め切れない分は捨てていい」「テープの外の崖に投げていい」と指示し、作業員らは従った。監督が不在の日には別の監督役から同じ指示があったという。
男性は納得できなかった。大きな袋を抱えて斜面を上り下りするのは確かに大変だが、これで除染したと言えるのか――。
作業開始から1カ月余りたった11月27日、男性は現場監督にただした。そしてそのやりとりを録音した。
男性「落としちゃっていいんですか」
監督「うんうん、OK。しょうがない」
監督は「自然に葉っぱがたまったんでしょ、そういうのは」とも言った。辺りは落ち葉が散らばり、人影はない。ばれないと思っているのだろう、と男性は感じた。
男性「環境省から言われたんですか」
監督「いや、まわりから言われて」
「まわり」とは誰なのか問い詰めず、男性は指示に従ったという。男性は年末、投棄させられたことを環境省に通報した。
鹿島JVが受注した田村市の山林で働いた3次下請けの40~50代の4人は11月16~17日、川沿いの斜面で落ち葉や枝をかき集め、川に捨てるように指示されたと証言した。計3立方メートルほど投げ込んだ。川は茶色く濁ったという。
取材班はこのうちの1人の男性(43)に現場を案内してもらった。川の縁にある崖の下に落ち葉が山積みになっていた。男性は富山県から来て、12月26日に作業を終えた。「命令とはいえ、川を汚してしまった。申し訳ない」と取材に語った。
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