放射性物質:「40ベクレルは機器の目安」
給食対応、一夜で修正 文科省、バタバタ
毎日jp
http://mainichi.jp/life/food/news/20111203ddm041040188000c.html
◇厚労側に事前相談なし
文部科学省が学校給食の食材に含まれる放射性物質について示した「1キロ当たり40ベクレル」との目安が、新たな混乱を招いた。11月30日付で「40ベクレルが給食の食材の目安」と読める通知を17都県に送り、森ゆうこ副文科相も1日の会見でその方針を認めていたが、中川正春文科相は2日、「測定機器の機種選定の目安」と説明。一転、軌道修正した形だ。食品衛生法に基づく暫定規制値の見直しを進めている厚生労働省には事前の相談がなく、省庁間の調整不足を露呈。通知を受けた自治体からは、困惑の声が上がった。【木村健二、石川隆宣】
今回の通知は、食品衛生法に基づく拘束力のある「基準」ではなく、拘束力のない「目安」という言葉を文科省は使っていた。しかも「測定機器の機種選定の目安」が文科省の真意。食品が「1キロ当たり40ベクレル」を超えた場合の対応まで書いたことが混乱を招いた。
「購入機種選定の際の目安を示したものであり、学校給食についての基準を設定したものではありませんので、ご留意ください」。文科省は1日深夜、こんな通知を都道府県教育委員会に対して改めて出した。11月30日の通知は国が補助対象にした東日本の17都県に限定されていたが、各地から問い合わせが相次いだため通知先を全国に拡大した。
11月の通知では、測定機器の検出限界とした40ベクレルを超えた場合の対応として、その食品を除いて給食を出すことも例示し、一般的な基準値として受け止められそうな内容だった。
一方、厚労省は、戸惑いを隠せない。通知の目安の設定に当たって、文科省から事前の相談が一切なかったからだ。厚労省側は「給食に基準」などの1日の報道を受け、文科省に問い合わせ、2日午前になって文科省の担当者が厚労省に「調整不足だった」と陳謝したという。厚労省の担当者は「相談があれば誤解を生む内容だと指摘したが、なぜ相談がなかったか分からない」。
「きめ細かい説明が足りない部分があった」と文科省幹部。学校などで屋外活動を制限する放射線量について当初の上限値を年間20ミリシーベルトとして批判を浴びたが、再び混乱を招く結果となった。
◇「不安になるばかり」 自治体、市民に不満
文科省の混迷で、通知を受けた自治体も混乱した。
宮城県教育委員会の給食担当者は、1日の「40ベクレル以下」との目安の発表を受け、県庁内の原子力や農政の担当者らと対策を協議。農林水産省や厚労省に問い合わせると「初耳だ」と言われ、文科省に電話をかけ続けた。同日夜にようやく電話がつながり、「あくまで測定機器の購入の目安」との説明を受けたという。県教委の担当者は「現場は振り回されて混乱した」と語った。
福島県教委にも、森ゆうこ副文科相の発言があった1日には市町村教委から「40ベクレルが今後の基準なのか」との問い合わせが殺到。県教委学校生活健康課の渡辺昇主幹は「大臣と副大臣の連絡をもっと密にしてほしい」。千葉県教委には各市町村からの問い合わせが数件あったほか、開催中の県議会では2日午前、公明党の県議が報道内容を引用し、県教委の今後の方針をただす質問も出た。答弁した鬼沢佳弘・教育長が「改めて1日付で、文科省から『40ベクレルは購入機種の精度の目安』という趣旨を確認する通知がありました」と対応した。
保護者からは国への不信感の声が相次いだ。気仙沼市から岩手県内に避難した小学2年の女児(8)の父で会社員の森谷将篤(まさあつ)さん(40)は「政府にごまかされているんじゃないかと思ってしまう」と不信感をあらわにした。仙台市内の小中学校に子供を通わせている同市宮城野区の主婦、天野澄子さん(45)は「政府がしっかりしていなくては不安になるばかりだ」と話した。2人の小学生がいる福島市の会社員、菅野吉広さん(43)も「数字で線引きするのではなく子供にはできる限り安全なものを与えるべきだ。基準を設定されても信用できない」。【宇多川はるか、三村泰揮、森有正、泉谷由梨子】
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◆文科省が11月30日付で出した通知の主な内容◆
【購入機種の選定】
検出限界は1キロ当たり40ベクレル以下とすることが可能な機種とすること。
【検査結果への対応】
市町村は、検査の結果、放射性セシウムが検出された場合の対応について、あらかじめ決めておくこと。
例えば、40ベクレルを検出限界としていた場合に、この値を超える線量が検出された際には、次のような対応が考えられる。
・該当する品目が1品目の場合には、その品目を除外して提供する。
・該当する品目が複数あり、料理として成立しない場合は、パン、牛乳のみなど、該当部分の献立を除いて給食を提供する。
給食セシウム規制値 市町村歓迎
読売
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20111202-OYT8T01373.htm
文部科学省が学校給食に含まれる放射性セシウムの目安を初めて示した。「1キロ・グラムあたり40ベクレル以下」で、肉や野菜の場合、現在の暫定規制値より12倍以上、安全を意識した数値となる。県教委は「突然の通知で、対応はこれから」とするが、市町村は「40ベクレル以下」を軸に対策を進める姿勢を示している。
文科省は11月30日、関東、東北、甲信越、静岡の17都県に通知書を一斉送付した。
文科省や県教委によると、通知書では、国の補助金付きで放射性物質の測定機器(各都県5台ずつ)を購入することを促している。その中で、補助対象の機種は「検出限界が1キロ・グラムあたり40ベクレル以下」と条件を明記。現在の暫定規制値(肉や野菜=同500ベクレル、飲料水や牛乳=同200ベクレル)より、厳格化された基準を示した。
文科省の担当者は「『40ベクレル以下』は、あくまで機械購入のための目安。食材の基準値を決めるのは厚生労働省」としながらも、森文科副大臣は1日、記者会見で「(学校給食の)目安と、考え方を示した」と述べた。県教委は「これは(法に基づく)基準ではないが、一つの『考え』が示された。無視はできない」とした。
「40ベクレル以下」には根拠法がなく、運用の判断は自治体になる。県内では、16市町村が独自で給食を測定する動きを見せており、伊勢崎市は「基準の厳格化は、保護者が安心する。『40ベクレル』を物差しに基準値を検討していきたい」と歓迎した。前橋市も「元々、『40ベクレル以下』を基準に考えていた。国のお墨付きをもらった」としている。
読売新聞の取材では、県内では給食の測定結果で同10ベクレルを超える食材は出たことがない。県幹部は「実際は、『40ベクレル以下』になっても影響はない。保護者の安心につながるなら歓迎だ」と実情を打ち明けた。
(2011年12月2日 読売新聞)
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