東京電力福島第一原発事故の影響で横浜市の下水汚泥に放射性セシウムが含まれ、最終処分が凍結されている問題で、市が焼却灰を建設資材化する業者に試験的に搬出し始めたことが分かった。市は「資材に混ぜて薄めるため、放射性廃棄物として扱う必要がないレベルになり、安全と確認している」としているが、発表していない。
毎日約四十トン発生する焼却灰は以前はセメント原料として業者に再利用されていたが、原発事故で停止。二カ所の汚泥資源化センターに保管されている量は約三万四千五百トン(六月末現在)になり、置き場所は限界に達している。市は新たに発生する焼却灰を南本牧廃棄物最終処分場(中区)の陸地部分に埋め立てる計画だが、住民や港湾関係者の反対で実現していない。
保管している焼却灰の放射性物質濃度は、二〇一一年六月に測定された一キログラム当たり六四六八ベクレルが最高。国の基準の一キログラム当たり八〇〇〇ベクレルより低く、最近発生しているものは同数百ベクレルに下がっている。市によると、業者から「三〇〇~五〇〇ベクレルなら建設資材に使える」と提案があり、今月十八、二十四日に各約九トンを南部汚泥資源化センター(金沢区)から搬出した。
二十五日にも搬出し、八月中旬からは毎日十トンずつ来年三月末まで運び出す予定。市が負担する処理経費は一トン当たり約三万円となる。市下水道施設管理課は「震災直後から保管している焼却灰は無理だが、日々発生している新たな焼却灰は処理できる可能性がある」としている。
◆「風評被害招く」と業者など非公表 市民ら懸念「計画明らかに」
横浜市は焼却灰の建設資材化を始めたことを発表せず、資源化の詳しい方法や業者名も公表していない。「風評被害を招くため」としているが、関係者らからは疑問の声も出ている。
本牧・根岸地区連合町内会の岩村和夫会長は「以前にセメント会社が引き取っていたように資源化できるのなら、資源化していただきたい」と一定の理解を示す。ただ、市から詳細は聞いておらず、「実際にやるなら事前に知らせてほしかった」とも話している。
市民団体「hamaosen対策協議会」の大谷賢治共同代表は「搬出されている焼却灰の放射性物質濃度や使い方がはっきりしていない」と前置きしたうえで、「拡散につながるような使い方はやめてほしい。計画を明らかにし、民主的に進めてほしい」と懸念を示した。
井上さくら市議は「薄めて拡散させるのではなく、濃縮して容積を減らし、管理すべきだ。少なくともデータを公表してほしい」と求めている。
東京新聞より
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