いわき市で食品内の放射能測定をしているNPO法人が、今度は分析に時間がかかるとされるβ(ベータ)線を出す放射性物質(核種)の測定を来年4月から始める。約3千万円かけて整備した検査室を2日、支援団体などに披露した。市民向けにβ線を測定する装置を整備するのは全国でも珍しい。
東京電力福島第一原発事故後、自主的に子どもたちの甲状腺検査などを実施しているNPO法人「いわき放射能市民測定室たらちね」。今年8月から検査室の工事を進めていた。
ストロンチウムやトリチウムが出すβ線は透過力がγ(ガンマ)線より弱いが、体内に取り込まれるとγ線と同様に内部被曝(ひばく)の原因になる。ただ測定が難しく、検査時間も長くかかる。検査できる場所も大学など特定の研究・専門機関に限られ、自治体などによる食品の放射能測定も通常、測定しやすいセシウムとヨウ素などが出すγ線で実施されている。
これまでγ線のみ測定していた「たらちね」は、食品などの安全性を確認するにはβ線の核種の測定が欠かせないとして、昨年末から検査導入の検討を始め、フィンランド製の検査機器を輸入。検査室の整備も含めた費用は支援団体などからの寄付で賄ったという。
食品のほか、土壌、海水などの検査も計画している。受け付けを始める来年4月にかけて、スタッフが試験を重ね、技術の習熟に努める。1回の検査は5百円~千円を想定している。
この日のお披露目会には清水敏男市長も訪れ、「市も様々な取り組みをしているが、復興を加速させるためには市民団体との連携が不可欠だ」と今回の取り組みを評価した。
たらちねの鈴木薫・事務局長(48)は「市民で測ることにより、放射能測定が一般市民により身近なものになる」と期待する。
活動を支援しているNPO法人「高木仁三郎市民科学基金」事務局の菅波完さん(48)は「市民主体のγ線の測定施設は全国に約100カ所あるが、β線はこれまでどこも取り組めなかった。高額な設備費を考えると会社を一つ作るのに等しく、個人が食物などを持ち込むだけでは事業としての継続は困難だ。市民の暮らしの中に検査体制をどう広げていくかが課題だ」と指摘する。
http://www.asahi.com/articles/ASGC262CJGC2UGTB00F.html
2014年11月3日
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