一方で、観光地への補償問題は、当然ついてまわることです。もちろん、原発事故の被害であるわけですから。
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前橋市の赤城山の頂にあるカルデラ湖「赤城大沼」はワカサギ釣りの名所だった。今年も9月1日に釣りが解禁されたが、東京電力福島第1原発事故の影響で出荷自粛が続き、持ち帰ったり食べたりはできない。湖沼が放射能に汚染されると放射性物質の数値がなかなか低下せず、厚生労働省が定めた「基準値を安定して下回る」という解除条件をクリアできないためだ。観光客は激減し、休日も閑散としている。
原発事故から5カ月後の2011年8月、当時の食品基準値(1キロあたり500ベクレル)を超過する放射性物質640ベクレルが検出され、ワカサギ釣り解禁は見送られた。赤城大沼漁協が県に働きかけ、釣った魚の全量回収を条件に再開にこぎつけたが、出荷自粛は解除されなかった。
改定された基準値(100ベクレル)を下回ったのは昨年9月。今年1〜3月の検査では8回連続で基準値を下回った。厚労省が定めた魚の出荷制限解除条件には「安定して基準値を下回ること」との文言があり、県蚕糸園芸課は1〜3月の結果から「もう大丈夫」と判断して自粛を解除した。
しかし、直後に水産庁から県に電話が入った。「時期尚早。50ベクレル前後が継続するまで解除は控えてほしい」。3月3日と10日の採取分は80ベクレル台だった。県は「国との協議が不十分だった」と陳謝し、再び出荷制限をかけた。水産庁の担当者は「平均が80ベクレルなら、100ベクレルを超えるワカサギが相当数存在する可能性がある」と説明する。
とはいえ、数値の減少幅が小さくなり、なかなか50ベクレル以下に落ちないのも事実。8月19日の測定では110ベクレルと再び基準値を上回った。11月3日採取分でも96ベクレルと、「50ベクレル前後が継続」には程遠い。汚染メカニズムを調査している群馬大の角田欣一教授(分析化学)は「カルデラ湖のため湖水の滞留日数が長いのが大きい」と指摘する。湖水の半分が流れ出るまでに約1・6年かかるため、計算上、事故時の水の約4分の1がまだ残っている。「また、湖の水が循環する秋には、湖底の表層にたまったプランクトンの死骸や有機物から再溶解したセシウムが湖内に広がるため、ワカサギの値には季節変動もある。それでも基本的には下流に流れ出た分、水中のセシウム濃度は減少に向かっているはず」と推測する。
同様の問題は、栃木県日光市の中禅寺湖や千葉県柏市の手賀沼など他県の湖沼でも起きている。手賀沼の問題にも携わる森口祐一・東京大教授(環境工学)は「原発事故の後、経済規模の大きいコメや海面漁業に専門家や省庁のバックアップが集まった。今後は福島県外を含めた河川や湖沼の汚染対策に力が注がれるべきだ」と話す。環境省は8月、湖沼や河川の除染は原則として実施しない方針を固めた。
赤城大沼の観光関係者は「第1次産業としてみれば小規模だが、内水面漁業は観光資源であり、地域経済への影響は大きい」と嘆く。客足は事故前に比べて4割程度まで落ちこみ、初心者や都内のバスツアー客はほとんど来なくなっているという。
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20141113ddlk10040143000c.html
毎日新聞
2014年11月13日 地方版
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